タツナミソウ

「へ〜。騙されたままでいたいね。深い事言うね〜。」

気がつくと目の前に深澤君が立っていた。でしょ？と誇らしげに顎をあげて言う舞に、腕を組んで相槌をうっていた。ちゃっかり、3杯目のハイボールも持ってきて。
もう止まらなくなって、永遠にたくみの話をする舞の相手を深澤君に押しつけて、1人で黙々とご飯を食べていた。
ちゃんと舞の話もなんとなくは聞いていた。まあ要約すると、舞はずっとずっとたくみの事が大好きで愛おしくて仕方が無くて、やっと付き合えたけど昨日フラれてしまったということ。こんなにも可愛い人でも満足できない人っているんだなと、たくみってどんなやつなのだろうと気になった。

「あのさ、どうして振られたの？」

今までたくみのいい所とか、ダメな所もそこが可愛いとか言う話を散々していたけど、この言葉で現実に戻されたらしい。舞はボロボロという音が本当に出てしまうのではないだろうかというほど泣いた。
どうしたらいいのかわからなくて、ただ舞の背中をさすっていた。ごめんというのも何か違う気がして何もいう事ができなかった。

「ほら〜。腹が減っては戦はできぬだぞ！これでもくえ！」

深澤は明太チーズだし巻き卵を出した。あれ？これ私の好きな食べ物、、。2人の話になかなか入れなくて、ご飯食べるしかなかったのを気づいてくれたのかな、、。

「さっきから幸子しか食ってないしな！！」

ガハハと笑いながら深澤君が言った。最悪、、、。私の好物だから出してくれたと思ったのに舞のためか。なんだ、、。て、なんだってなんだよ。と自分にノリツッコミをした。

深澤君の卵焼きを食べた舞は、目をまんまるに見開いてもう一口食べた。6個のうちの３つ目を食べ終わった時、舞は話し始めた。

「私ね、付き合ったらいつか終わりがあるかもしれない。そう思ったから、幼馴染としてずっと一緒にいられるならそれでいいってずっと思ってたの。でもね、我慢できなくなっちゃったの。たくみに彼女が出来るたびに、その彼女に自分を重ねて、嬉しくなって悲しくなって切なくなって、おかしくなりそうだった。だから付き合っても別れなきゃいいじゃんってなって、やっと付き合えたの。だけどさ、本当に好きな人と付き合うと良くないね。どんどん欲深くなっていくの。それが重かったのかな。前の関係に戻りたいって言われちゃった。」