タツナミソウ
階段を登り終わり、ちょっと立て付けの悪いドアを開けて5メートルくらいの廊下を歩いてまたドアを開けた部屋の、そのまた隣の部屋が寝室だ。誰かさんが寝やすいようにと言って何年か前に買っていたセミダブルのベットに舞をおろした。その間に何人か彼女ができていたはずだけど、家に入れないならそのベット誰のためだよって前に一度聞いてみたことがあるけど「幸子は知らなくていいんだよ。」と言われてしまったのをふと思い出した。その誰かさんが舞になるのかな?そう考えると、心の穴の中にすうっと冷たい風が通った気がした。
正直今までの彼女は付き合ってても部屋に入れた事もないくらいだったから私の方が仲がいい自信があった。別にその彼女達と自分を比べて勝った気持ちになっているわけじゃないけど、、。やっぱり少しなってるけど。全然知らない子が深澤君の1番になるならこんな気持ちにはならないのかもしれない。でも舞は違う。

「あれ?」

思わず声が出た。私が好きなのは亮太だけで、ドキドキするのも嬉しくなるのも悲しくなるのも、全部全部亮太だけ。そのはずなのに、これだったらまるで私が深澤君を好きみたいじゃない?深澤君の1番になりたいみたいじゃない?そんなわけない。そんな事あるはずがない。あっていいわけない。深澤君の顔がまともに見れなくなってしまった。
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