タツナミソウ
どうしたの？何があったの？私には言えないこと？聞きたいことが、もっともっと増えてしまった。知らない方がいい事だってあるのはわかっている。でも聞きたい気持ちが勝って言ってしまった。

「あー。うん。あのさ、、。深澤君とさ、、。いや、深澤君っていい人でしょ？」

躊躇ってしまった。本当は深澤君と何かあったの？そう聞きたかった。別に彼女でも何でもないんだし、何があったとしても傷つくわけではない。ただ知りたかった。でも知りたくなかった。やっぱり知りたかった。だから、いい人でしょ？なんて周りくどい言い方をして確かめたかった。

「、、うん。いい人だね。またご飯行こうね。」

私は頷いた。それ以上しつこく聞くことはしたくなかった。いやできなかった。もし、想像しているような事があったとしても、私の大好きな舞が幸せになって、ずっと仲が良かった深澤君も幸せになる。そんないい事嬉しくないはずがない。喜ばないわけがないはずだ、、、。マスクをつけて、ロッカーの鍵を閉めた。
化粧を終えた舞と一緒に更衣室を出ると、男子更衣室からも翔平が出てきた。後ろ姿を追いかけて小走りをした。

「あ、翔平！今日の注文のケーキなんだけどさ、、、え、、？」

翔平の顔を見た瞬間、動けなくなった。彼の肩を掴んだ手が固まってしまった。

「幸子？どうしたの？、、、あ。先行ってるね。」

固まった私を不思議に思った舞も小走りでこちらに来て、翔平の前に回り込んだ。一瞬目を大きく見開いて、私の方を見て小さな声で言って、第二の部屋へと向かっていった。
翔平の顔には、青くて緑で紫のアザができていた。定番の唇の横に。口角は切れてその周りを彩っていた。見るなよ。と言わんばかりに右を向いた翔平の顔を両手で掴んでぐいっと自分の方に寄せた。

「いって、、、。なんだよ。」

「なんだよ。じゃないでしょ。どうしたのよ。」

目を合わせようとしない翔平の目をじっと見つめた。
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