タツナミソウ
「いいけど、俺に惚れられたら困るなー?亮太に怒られるぞ??」

「そんな事ある訳ないし!なんなの!もういい。友達になってやんない!」

「うそうそ。ごめんって、じゃあこれから友達としてよろしく。」

翔平が笑いながら返してくれたから、安心して自然に振る舞えた。差し伸べられた翔平の右手を左手で握り返した。「いや、変な握手。」と翔平が笑ってくれたからよかった。「翔平がツッコむか試したんだよ。友達検定合格よ。」なんて腰に手を当てて馬鹿な事を言ったのに、喜んでくれた翔平はいいやつだなと思った。自分がこんなにも息を吐くように嘘をつける人なんだと、翔平と出会ってから気づいてしまった。できれば一生知りたくなかったけど、嫌だとは思っていない。亮太がいなくなってから、ただただ日常をこなしているだけだったけど、今は毎日違う色が増えたり減ったり混ざったりして楽しい。明日はこれだなとか、明後日これがあるから頑張ろうとか、考えられる事が当たり前になりつつあるのがとても幸せだ。

それから幸子と翔平は友情の握手をして、駅へと向かった。改札を通り、それぞれの電車へと乗り込んだ。
1人になって足から力が抜けた時、改めて深澤君からの告白を思い出して恥ずかしくなってきた。でも、ずっと友達だったし、お兄ちゃんみたいだったから、これからそういう風な見てと言われても正直いきなりは無理だ。でも、嬉しかったのは事実で心が動いたのも事実。私が好きなのは亮太で、今は亮太との時間を大切にしたい、それが1番大事な事に決まってる。
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