王子達は公爵令嬢を甘く囲いたい
女神像の前まで歩いていく。間近で見るとその精密さや神々しさがよく感じられた。
私は前に座り、女神様に祈りを捧げ始めた。
「(もし、女神様がいるならありがとうござい
ます。私をこの世界に転生させてくれて。おか
げで今は楽しく暮らせてます。
私は大切な人たちを守りたいです。そして、
このまま笑顔でみんなが過ごせたらいい、と思
っています…)」
それは、主に感謝と願い。全員は無理かもしれない。でも、私に出来る範囲で誰かを助けたいと、前世の影響もあって思っている。後から後悔したくないから。
『ねぇ、アンジュ聞こえてる?』
…ん?
『あ、聞こえてるっぽいよ。』
『そうだね。良かった〜。』
『……』
頭に直接聞こえてくる…。誰?
『ぼくは、全の妖精王。』
『あたしは、時の妖精女王。』
『…無の妖精王……。』
『『『ぼく(あたし)達は、次期精霊(女)王』』』
えぇ…。妖精王?!しかも、聞いたことのない属性があるよ。そして次期精霊王って…。
あの、私に何か?
『ううん。今は特に用事はないの。』
『ただ、アンタがどういう子か気になって来た
だけよ。』
『…別に……。』
そっかー。まぁいいけど。
それより、兄様のときもあなた達?
『違うよ〜。』
『あれは下級妖精ね。』
『…オレらより弱い奴らだ。』
妖精って、下級とかあるんだ…。じゃあ精霊もか?
『くわしくは─』
『今度教えるわ。』
『ぼくのセリフなのに…。』
『…またな……。』
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「では、両手を水晶玉にかざしてください。」
私はゆっくりと手をかざし、水晶玉に魔力を流し込む。
すると、赤、銀、緑、黄、漆黒、そして透明な玉、合計6つが浮かび上がった。
さらに、セピア色、虹色の玉も後から浮かんできた。
「おぉ…!!すごいっ!火、風、植物、雷、闇、無
属性。アンジュ様も6つの属性持ちとはっ!しか
も、あれはなんだ?知らない属性の色だ!」
神官様は、さらに興奮した様子で一番はしゃいでいた。
少し落ち着いてから、今度は魔力量を教えてもらう。
「魔力量は…5万。うん、ザライド様と同じで
すね。」
兄様と同じか。双子だからだろうか?
「アンジュ、お疲れさま。」
兄様が微笑みながら声をかける。
お父様とお母様は、兄様が祈りをしていた時以上に呆然とし、ブツブツ何やら呟いていた。
「妖精が…。少なくともあれは上位以上よ…。
しかも、9属性以外の色……?!」
「ザライドに続いてアンジュまで…。僕らの愛
しい子供達はいくら何でも規格外すぎる…!」
お母様はともかくお父様…。〈規格外〉って言葉、あなたにだけは言われたくないよ…。
私たちがこうなのは貴方達のハイスペックDNAのせいですよ…。
なんだか疲れた……。
「はぁ…」と、思わず5歳児ならぬため息をつく。すると、兄様は目ざとくそれに気づいた。
「疲れたよね。大丈夫?」
「兄様…。はい。大丈夫です。兄様は?」
「僕はアンジュより体力あるからね。」
確かに。兄様はよくお父様の指南を受けたり、学校の校庭ぐらいの小さい方の庭を走っている。
双子だし、今は男女の差は特にないだろう。つまり、兄様と同じように動けば同等ぐらいの体力はつくはずだ。
丁度、運動したかったし、いいかもな。
帰ったらお父様にお願いしよう。