王子達は公爵令嬢を甘く囲いたい

 あれから少しして、マルスの同期(もはや保護者)であるダイナスがマルスを引き取りに来た。
 いつもお疲れ様です。

 「はぁぁ…マルス、やっっと見つけたっ!!」

 「ダイナス、マルスは一体何をしたんだい?」

 「あぁ、ザライド様…コイツは、アンジュお嬢様
 に自分の作ったお菓子を喜んで頂けたということ
 を仕事中(お仕置きで倍の量)にずぅっっと自慢し
 ていたんです。それも手は動かさずに!!」

 「う、うん」

 「しかも、しかもですよ!コイツそれを料理長の
 目の前でやってたんです!堂々と!」

 「そ、そうか…」

 「大体この前なんか……」

 
 あぁ、ダイナスの気迫に兄様が押されてる…。
 ダイナス、どんだけ鬱憤溜まってたんだ…。
 うーん…特別手当を検討してみようかな…。


 それにしても、まだマルスへの不満が続いてるな。
 時間、大丈夫かな?

 
 「あ、あの、ダイナスさん」

 「ってですね!……ん?……ア、アアアンジュお嬢
 様!な、何でしょうか!」

 不意に私から話しかけられて動揺したダイナスは、すごく吃っていた。

 「時間、大丈夫ですか?」

 料理長が来て(降臨)してしまいませんか?

「あ」

 みるみる間に青ざめていったダイナスは、急いでマルスの首根っこを掴み廊下へと引きずって行く。

 「お、おい!ダイナス何するんの!?」

 「そりゃお前、料理長が来る前に退散するんだろ
 うが!!」

 「だからといってそこ掴まないでいいでしょ!?」
 
 「お前が逃げない様にするためだ!!」

 「はぁ?!オレは逃げないって!!」
 
 「嘘付け!そう言ってお前、いつも俺に料理長(魔
 王モード)を押し付けてるだろうが!!」

 「いや、あれはしょうが無いって!」

 「しょうが無くない!大体お前が料理長怒らせる
 ようなことしてるのが悪いんだろうが!!」

 
 
 2人はそんな会話をしながら書庫を去っていた…。


 「「………………」」

 「ねぇザライド兄様」

 「何かなアンジュ」

 「なんか、すごく疲れました」

 「奇遇だね、僕もだよ」

 「魔法書を探しに来たのにどうしてこうなったの
 でしょう?」

 「ん~、……マルスのせいかな」

 「はい、マルスさんのせいですよね」

 「……ねぇアンジュ」

 「なんですか兄様」

 「魔法書を読むのはまた明日にしない?」

 「そうですね」

 うん、それがいいと私も思うよ。魔導書、読みたかったけどもう気力がない…。

 結局、私達も書庫を出て、今日の収獲は魔法書の区画が分かったことと、その周辺は魔力が漂っていて、妖精や精霊が好きそうな感じがしたということだけだった。

 
 もちろん、兄様の部屋で料理長から貰ったクッキーを食べたよ!料理長作なだけあってすごく美味しかった。


 

 
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