王子達は公爵令嬢を甘く囲いたい
幼少期

5歳

 「ザライド兄様!」

 私は廊下を歩く双子の兄の姿を見つけ、思わず走って駆け寄った。

 「アンジュ!」

 こっちを振り返ってニコッとした笑顔を見せてくれる兄様、かわいい!

 「……」

 「どうしたの?」

 ハッ!そうだった。兄様に用があったんだった。あまりのかわいさにボーッとしてたよ。

 「ザライド兄様、お父様が執務室に来るように
 と言ってました!私達2人に用があるみたいです
 よ?」

 「そうなの?父様、どうしたのだろう?」

 「さあ、何でも5歳になったからの話しだと言
 ってましたけど…。ザライド兄様はこう言えば
 分かるといってましたが、分かりますか?」

 「ッ!わ、分かった。」

 「?」

 どうしたんだ、兄様?何か狼狽えてるぞ?

 まぁいいか。

 それよりそう、この世界に生まれてから5年たったのだ。

 この5年間、いろんなことをして、この世界について知った。

 したことといえば、兄様と入れ替わって両親と使用人達を驚かしたり(一卵性だからそっくりなのだ)、木に登ろうとして怒られたり……エトセトラエトセトラ。

 知ったことといえば、この世界には魔法があるということ、精霊がいること、魔物もいること…などなど、つまり、ファンタジーな世界だった。

 そして私は、どうやら公爵家に生まれたようで、この生ではアンジュ=リーノ=エルドラードが正式な名前だ。
 
 サラサラでストレートなプラチナブロンドの髪、澄んだスミレ色の瞳で、容姿はそこそこ整っていた。初めて見た時は「美幼女!」と喜んだが、両親と兄様を見てるうちに私はそこまでなかったと考えを改めた。

 兄様は、ザライド=リーノ=エルドラード。
 同じくサラサラなプラチナブロンドの髪、少し濃いめの紫色の瞳で、今は『かわいい』が似合う容姿だ。双子なのに兄様の方がかわいいなんて不条理だと思う。

 お父様は、
  ハリスロード=リーノ=エルドラード。
 少しくすんだように見えるプラチナブロンドの髪、優しげに細められた瞳は碧色で、とても20代半ばとは思えない若く見えるイケメンだ。
 
 お母様は、
  アリスフォード=リーノ=エルドラード。
 フワフワした綺麗な金髪、私達双子と同じ紫色の瞳、どこが儚く感じるかわいい系美女だ。しかもお父様同様、若く見える。ほのかは落ち着いてたせいか、少し年上に見られてたので羨ましい。


 リーノは、王家の血筋に連なる家、者、に与えられる名らしく、王族の次、もしくは同等の発言力を持っている。
 
 今のところ、リーノを名乗っているのはウチのエルドラード公爵家しかないので、貴族で一番地位が高い。

 そのため、ケンカを売る馬鹿はなかなかいない。いたとしても、地位も力(物理と影響力、魔力)も強いためコテンパンに、徹底的に潰される。

 一度見たことがあるが、笑顔で相手を潰すお父様…、めっちゃ恐かった。目が笑ってなかった。

 いつも私達に甘い、めっちゃ溺愛してくる優しいお父様の影も形もなかった。

 下手したら王族より強いらしい。というか、1人で小国滅ぼすぐらい簡単なことだと、本人と周りが言ってた。つまり、要注意人物、人間兵器だ。

 スゴっ!お父様、やばい。チートすぎる。あのお母様も優れた魔法の使い手らしい。実力は、王宮魔術師より強いと聞いた。

 そんな2人の子供である私と兄様も魔力量が大人より多く、まだまだ増えるみたいだ…。

 楽しみだが、少しハイスペックDNAを恐ろしく感じる今日このごろ。
 
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