王子達は公爵令嬢を甘く囲いたい
今回ディアムールへと私達が訪れた主な目的は、来週再び会う予定となっているカトリシアとシュメルク様にする贈り物を各々見繕うためだ。
勿論屋敷に商人を呼び、それで贈り物を選ぶこともできた。
しかし、“せっかく王都行きが許可されたのにそれでは勿体ないよね”というふうに思ったので、今私達は王都にいる。
まぁそれに、あの子が喜びそうな物を自分で自由に見て回って買いたかったしね。
毎月貰っていたお小遣いがまるまる残っているので、贈り物に使える予算はかなり多めだ。簡単に言うと、平民が1年間遊び暮らせるぐらいの金額はある。
そんな額を空間魔法付ポーチ─通称“マジポーチ”に入れて持ち歩くのだと思うと怖くなってきた。マジポーチの方が何倍もの金額がするので矛盾しているけど。
「さぁ着いたよ、僕のお姫様」
心此処あらずな私を元に戻すためだったのか、兄様が冗談めかした言葉遣いで声をかけてきた。
しかもその際、片手を胸に当てて、もう片手を私の方へ伸ばしていて、まるで絵本の王子さまのような仕草をしていたのだ。
かわいいとカッコいいを共存させているだなんて、我が兄ながらなんて恐ろしいんだ。そのギャップのせいで軽くキュン死するところだったじゃないか。
そんなことを戯れに思いながら兄様の手をとった。
「だめじゃないですか《《ライ》》兄様。今の《《ぼく》》は、《《あなたの弟》》である《《ランジュ》》なんですから!」
「ふふふ、そうだね。だけど今はまだ馬車内だから、君は僕にとって最愛の妹で婚約者のアンジュだよ」
「……今だけ特別なんですからね、ザライド兄様」
「もちろん、ちゃんと分かっているよ」
兄様による“僕の最愛”発言で頬が多少熱くなった私は、それを隠すようにぷいっとそっぽを向いた。口から飛び出た言葉も相まって、まるで私がツンデレみたいじゃないか。
脳内の桜が「ほのかって多少ツンデレっぽいところあったじゃん!」と主張してくるが、断じて違う。私は認めないからな!
そんなことを考えている私をすぐ隣で見ている兄様は、どことなく嬉しそうに微笑んでいた。
※長らく更新していなくて申し訳ありません。しかも今回はかなり短くなってしまいました。月1更新はこれからもできない可能性は高いですが、頑張って書いていくので、気長にお待ちいただけると嬉しいです。