王子達は公爵令嬢を甘く囲いたい
実際に街中を歩くと、馬車内から見た時よりも活気に溢れた場所なのだと分かる。それと、ここに住んでいる民がみんないい人で、かつ人懐っこい人が多いということも。
まぁ、私が何を言いたいのかといえば。
「お、坊っちゃん此処に来んのは初めてか?何処に行きたい?おっちゃんが案内してやろうか?」
「うちの果物は王都1さ!良ければ買っててくれよ」
「これ食うかい?何?毒味が必要?お貴族さまは大変なんだねえ」
「あぁ、菓子を売ってるのは向こうの通りにある1番デカい店だ。あそこらへんはちと入り組んでるが……大丈夫そうだな」
道を少し歩く度に色々な人から話しかけられるのだ。それも全員男の人。まぁ、この世界では当たり前なのだけど。
でもまぁその度に足を止めなくてはならなくなり、あまり進めていない。既に歩き始めてから10分程度は経っているのだが、後ろを振り返れば未だに馬車が小さく見える。
「…兄様、どうしましょうか」
「うーん、これは僕も予想外だったなぁ。…とにかく、僕の手を離してはダメだからね」
「兄様とは双子なのに、何故ぼくは小さい子扱いなんですか…おかしいでしょう」
「ランは(色々と)危なっかしいんだから仕方ないよ」
「意味が分からないです」
「でもほら、後ろの彼らは僕の主張に賛同しているよ」
気配を消して私達に着いてきている護衛達の方をそっと見ると、彼らは笑顔で兄様の言葉に頷いていた。
…一体私を何だと思っているんだ。
「……その理由に納得はできませんが…この人混みではぐれても困りますし、手は離しませんよ」
私の返事がどう心の琴線に触れたのかは分からないが、兄様はそれはそれは素晴らしい満面の笑みを浮かべた。
ついでに、どこからともなく「グハッ…!」とか「ミ゛…ッ」などの声にもならない声が聞こえてきた気がした。
それがまるで、尊いものを目撃したオタクっぽい悲鳴だったという点については、気の所為だと思いたい。よしこれについてはサクッと無視しようそうしよう。
※今回も短くてすいません…!(土下座)