王子達は公爵令嬢を甘く囲いたい

〜ザライド視点〜



 僕は、エルドラード公爵子息でアンジュの双子の兄、ザライド=リーノ=エルドラードだ。

 うちは王家に並ぶ筆頭貴族で、それをいずれ継ぐことになる僕はよく、父様に連れられていろんな場所に顔を出していた。

 貴族の集まりに行くことが多く、数少ない令嬢のいるところはうちとの繋がりをもつために、子供だけのお茶会によく招待された。

 初めて参加した時は本当に驚いた。

 この世界の女の子は少なく6人に1人しか生まれない。そのため、女の子はとても過保護に、ドロドロに甘やかされる。

 
 でも僕は、それは可愛らしくて、心優しいからだと思っていた。
 
 だって双子の妹のアンジュはそういう子だったから。

 だから、その令嬢達の態度や見た目を見た時は自分のそういう価値観が180度ひっくり返された。

 

 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽

 「初めまして。僕はエルドラード公爵子息ザラ
 イド=リーノ=エルドラードと申します。本日は
 お茶会にお招き頂きありがとうございます。」
 
 その日、初めて招かれたお茶会はある伯爵家で行われた。

 「あぁ、君があのエルドラード公爵家の子息
 か。ぜひともウチの自慢の娘と仲良くしてあげ
 る権利をあげよう。光栄に思いなさい。」
 
 伯爵は、そんな上から目線で僕に言ってきた。いや、うちの公爵家の方が圧倒的に立場が上なんだけど…。なんでコイツはこんなに偉そうにしてるんだ?

 そんなふうに思いながらお茶会の場所に案内された。

 そこはある意味地獄絵図が広がってた。

 「ちょっと!このケーキは何なの!別のを用意し
 なさい!」

 「で、ですが…」

 「何?このわたくしの言うことを聞けないって
 言うの!あなた、わたくしの婚約者候補にも入
 れてあげなくてよ!!」

 「も、申し訳ありません…」

 「あら、ではわたしがもらっていいかしら?」

 「えぇ、わたくしのお古のそれでいいのなら構
 いませんわ!それに、新しい従者がそろそろ欲
 しかったんだもの。丁度いいわ。」

 「お、お嬢様…そんな……」

 

 ……。これは一体何なんだ?何故たかがケーキだけで、1人の従者のクビと新たな職場が決まったんだ?しかも、まるでモノのような感じに軽々
と…。

 それに、あの肉団子のように太った令嬢達も何なんだ?伯爵、あれが自慢の娘なのか!というか、どっちも肉に埋もれて目がロクに見えないぞ!

 これじゃ、どっちが伯爵の娘なのか見分けがつかないな。性格もヒドイし、とんだワガママ娘じゃないか。

 妹のアンジュとは天と地ほどの差がある。

 

 この日、なんとかお茶会を終えた僕は馬車の中で父様に質問した。

 「父様、今日の令嬢達なんというか…あれはな
 んですか?アンジュと全く違う。」

 「うん、そうだね。ザライド、あれが世の中の
 大半の女の子の態度だ。」
 
 「むしろあれが世の中の普通だということなん 
 ですか!恐ろしい…。僕は将来あんなのと結婚
 しないといけないのか…。アンジュは天使だっ
 たんですね…。」

 本当、あれが世の中の女の子の態度ならアンジュは天使並みだったのか…。どうすればあんなのができるんだ?

 「あぁ、アンジュは可愛らしいし、そして何よ
 り心優しい。女の子は少ないから大抵甘やかさ
 れて育つ。だから、わがままで、自分で動かな
 いから太っている。」

 そんな理由でなのか…。

 「…?自分で動かない?」

 「とても過保護だからね。移動は大抵誰かに抱
 えられてだ。」

 な、なるほど…。そういえば、アンジュも今までにそうされそうになってたな…。全部拒否してたが…。

 「あと、結婚については大丈夫だ。」
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