バカ恋ばなし
 6月後半の梅雨時期、文化祭当日は曇り空で湿気が強く、蒸し暑かった。私は、当

日用に親に買ってもらった赤やオレンジの鮮やかな花模様の刺繍が入った白い半袖

シャツに、黒の膝上丈のミニスカート、白いスニーカーという謎のコーディネート

で装い、髪型は暑苦しさを覚悟でロングヘアを下ろして、両サイドに小さな三つ編

みを結わえて後ろに一つに束ねてハーフアップにしていき、赤と緑の縞模様のリボ

ンで結んだ。手先が不器用なので、髪結いは精々一つに束ねるか、後ろに1本の三つ

編みしかまともにできないのに、普段の髪型ではマズい。可愛らしさと女性らしさ

といった素敵な印象を彼に見せつけるためにも、ここはロングヘアを下ろしてサイ

ドを三つ編みでハーフアップにした方が良いと考えた。そして編み込みが出来ない

ので、両サイドに三つ編みを結ってみたがなかなか上手く結えず、鏡の前で眉間に

皺を寄せながら自分の髪と格闘し、6回もやり直してやっと上手く結えた。そして

洗面所の鏡に思いっきり顔を近づけて、鼻毛や鼻くそがはみ出していないか、目の

周りに目脂がへばり付いていないかを入念に確認してから「よしっ!」と気合を入

れて玄関を出た。外に出るとロングヘアを無理やり下ろしたので蒸し暑く、首の後

ろが髪の毛で暑苦しかったがそれでも可愛らしく装うために我慢をした。こう見る

とオシャレなのかどうか謎であるが、当時の私にとって、花の刺繍入りシャツが女

らしさを強調するアイテムと思い込み、自分なりに精一杯のオシャレをしたつもり

だった。

K駅前で佳子、清子と待ち合わせをしてT駅行きの電車に乗り込み、T駅からバスに

乗って譲二君の高校へ向かった。行きのバスの中で、私はかなり緊張して胸がドキ

ドキと高鳴り、口数が少なくなっていた。でもその反面、譲二君に会えるといった

嬉しい気持ちも強くあった。
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