バカ恋ばなし
譲二君の高校は、小高い丘の上にあるので、校門まで長い坂道があった。蒸し暑い

この時期、坂道を昇るのはかなりの苦痛を強いられるのだが、その時の私は、プリ

ンス譲二君にもうすぐ会えるという緊張と嬉しさの方が遥かに勝っていたので、さ

ほど苦痛に感じなかった。額や首回りはかなり汗ばんでいたが。

校舎に入ると、喫茶店やお化け屋敷等、様々な催し物のポスターや、折り紙やカ

ラーテープ、風船等で作ったカラフルな装飾が廊下中に貼られていて華やかさを演

出しており、学生や外部から来た人達がいてとても賑わっていた。比呂ちゃんのお

友達情報によると譲二君のクラスは校舎3階にあり、縁日を催しているとのことだっ

た。私たちは3階に行き、譲二君たちのクラスの教室を探し出した。教室前の廊下の

壁には模造紙に「3年A組、縁日」と黒い極太マジックペンで大きく書いてあって、

字の回りを折り紙でカラフルに装飾した張り紙がドンと貼ってあった。教室内に入

るとヨーヨー釣りとスーパーボールすくいが行われており、ヨーヨーやスーパーボ

ールがとてもカラフルで室内に華やかさを添えていた。3~4人の学生や外部から

来たカップル1組くらいが来て、キャッキャと騒ぎながらスーパーボールすくいをし

ていた。クラスの女子生徒たちは皆、花柄の浴衣姿で接客をしたり、お喋りをして

いた。私はそんな賑やかな教室の中をキョロキョロと見渡して譲二君を探した。譲

二君を見つけた時、私は思わずドキッとした。 

「あっ……!」  

譲二君は白い無地Tシャツにブルーデニムといった超爽やかな装いでいた。スラリと

したスタイルと爽やかなイケメンスマイルに、この装いはとても似合っていた。学

ラン姿もイカしているけど、白Tデニムの装いは一層イケメンさを際立たせていた。

他の男子生徒たちも同じようにTシャツとブルーデニム姿だったが、爽やかさは譲二

君の足元にも及ばない。1号君も同じような格好だが、譲二君とは格段に違う。

(めっちゃかっこいい……。)

私は思わず心の中で呟いた。
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