バカ恋ばなし
第1章 初恋

そんな私が初めて現実の男性に本気で恋をし

たのは高校2年生のとき。早生まれなの

で16歳になって2か月くらい経った春頃であ

った。

当時私は、自宅のあるK市の隣、T市内にあ

る県立の女子高校まで電車で通学していた。

相手は同じK市内に住んでいて、T市内にある

男女共学の県立高校に通っている男子だっ

た。毎朝同じ駅から7:30発の電車で、同

じ車両に乗って通学していた。高校進学して

からずっと同じ時刻で、同じ車両の電車に乗

って通学していたが、最初は気付かなかっ

た。何かのきっかけで意識をしたのだと思

う。その何かは忘れてしまったが、多分ふと

したときに彼の近くに来て顔をしみじみ見て

からだろう。長身で、スッキリとした端正な

顔立ち、控えめでおとなしい、無口な感じの

印象を醸し出している彼に、いつしか好意を

抱くようになったのだ。それに、彼とはだい

ぶ昔に会っていたような気がしていた。

「昔、保育園と小学1年生のときの同級生に

似ている。同じクラスで隣の座席にいたよう

な……。」

私は、学校から帰宅後すぐに自宅の押し入れ

にある古いアルバムを引っ張り出して幼少期

の写真を確認した。私は、生後4か月目から

小学校1年生までK市に住んでいたが、2年生

からは父の仕事の関係でC市に引っ越しをし

ており、中学校卒業まで住んでいた。そして

両親がK市内に土地を購入して家を建てたた

め、高校入学と同時に再びK市に引っ越しを

して現在に至っている。私は、アルバムの中

にある1枚の若干セピア色をした写真を見つ

けた。それは保育園の多分年長時代の頃の運

動会で、種目の出番待ちで待機をしていると

きに撮ったものであった。写真には、私の隣

に男の子が並んでいて、お互い神妙な表情で

写っていた。面影からすぐあの彼だと分かっ

た。

「やっぱりそうだ!譲二くんだ!」

譲二くん。間違いなければ彼の名前は譲二く

んだ。保育園で年長すずらん組と小学1年生

の頃一緒のクラスだったあの春田 譲二君に

違いない!

「ひょっとするとこの再会は何かの縁なのか

な……。」

そう思ったとき、私の中で譲二君への想いが

勝手に膨らんでいった。ただ偶然一緒の車両

に乗り合わせただけなのに、いきなり“運命

の出会い”的な想いがどんどん張り巡らされ

ていったのだ。   

この時から「勘違いでおバカな恋。」が始ま

っていった。
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