バカ恋ばなし
2月17日日曜日、ついにこの日が来た!私にとっての「決戦の日」が来た!

私は前日から気分が高揚して夜あまり眠れず、そのため当日朝は頭がボーっとして

重たかった。ベッドの上でウダウダと横になっていて時計を見るともう11:00

を回っていた。

「うわ、もうこんな時間だ……起きなきゃ……。」

私はベッドからムクッと起きて、ボーっとした頭を抱えながら洗面所に向かった。

鏡の前に立つと浮腫みぎのブスくれた顔が映っていた。私は、ブスくれた顔をしな

がら蛇口からぬるま湯を出してさっと顔を洗った。顔を洗うと頭がだんだんはっき

りとしてきたからか、今日が私にとって一大イベントの日であることを自覚し、

徐々に緊張の波が押し寄せてきた。

「遂にこの日が来たか……。」

私は髪をとかして両サイドの髪を後ろにハーフアップにして大き目の茶色いリボン

を結わえた。1週間前から考えた髪型で、これも女性らしさと可憐さを印象づけるた

めの演出になると考えたのだ。やはり手先が不器用なものだから上手く束ねられ

ず、髪やリボンを持つ腕がプルプルと震えたが、眉間に皺を寄せて鏡を睨みつけな

がら悪戦苦闘した末、4回目でやっときちんと結わえることができた。そして鏡に顔

を近づけ、両眼周囲に眼脂がへばり付いていないか、鼻から鼻毛や鼻くそがはみ出

していないかを入念にチェックした。今回、近距離で会うのだから少しでもそんな

のが見られたら譲二君に一発で嫌われてしまう!こんなにマジマジと自分の眼と鼻

を見回したことはないだろうというくらいにチェックをした。幸い眼脂、鼻毛、鼻

くそは出ていなかった。

服装は、1週間前からずっと考えていたものを用意した。上は黒のタートルネックの

セーター、下はグレーの膝下丈のフレアスカートに黒いタイツ、靴は黒革のローフ

ァーといったコーディネートだ。155cm体重55kgとぽってり子デブ体型な

ので、なるべくほっそり見えるように黒を多く取り入れたおかげでかなり地味にな

ってしまったが、それでも、控えめで女性らしさが演出できるように、その上体型

をカバーできるといったことを念頭に置いて自分なりに考えに考えぬいた懇親のコ

ーディネートだった。そして前年両親から誕生日プレゼントとして貰ったモスグリ

ーンのゆったりとしたダッフルコートを羽織った。

黒いショルダーバックに財布とハンカチ、手作りしたチョコレートパイを丁寧に詰

めた。

「絶対にこのチョコパイを譲二君に渡すんだから。」

私は今日のバレンタインの成功を願いながら、自室を出て早いテンポで階段を降

り、玄関へ向かった。

「ねえちょっと、お昼ご飯は食べないの?!」

玄関で靴を履いている私を見て、母親が慌てて声をかけてきた。

「ごめん、もう出かけるから。」

私は緊張していて昼食を摂る余裕がなかった。靴を履き、そそくさと玄関のドアを

開けて外に出た。
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