バカ恋ばなし
「ああ、丸田さん。あなた4月から産婦人科病棟に行ってもらうからね。」
「えっ?産婦人科ですか?」
「そうよ。それがどうかした?」
「あ、あのお~……私、口腔外科病棟希望したんですけど……。」
「あなたは産婦人科病棟への配属が決定したの!行くしかないの!文句言わずに行ってちょうだい!」
「ええ~っ?……あ、はい……。」
何で?といった私の表情を見るなり、看護部長は険しい表情を浮かべて強く言い放った。
(何だよ!第一希望もヘッタクレもないじゃん!何であの超最悪な病棟に配属なんだよ!もうお先真っ暗じゃん……。)
産婦人科病棟……それは私たち同期看護師の間では「超最悪な病棟」で恐れられていた。その理由はそこの病棟師長をはじめ助産師たちがとても恐ろしいこと、超が10個くらい付くほどの性格悪さで有名な一つ上の先輩看護師田島 早紀がいるのだ。そんな理由で同期は全員、マジで誰一人として配属希望を出す者はいなかった。
「あ~あ……私、絶対田島にイジメられる……。」
私は頭を項垂れ物凄く暗い表情を浮かべながら看護部長室を後にした。これから先の看護師人生に地獄が待っていることを思うと廊下を歩きながらとてつもなく心が暗くなった。消化器病棟に到着してナースステーションに戻った私の顔を見て、先輩看護師達が心配そうに声をかけてきた。
「どうした丸ちゃん、大丈夫か?」
「私、4月からあの産婦人科病棟へ配属になったんですよ……もう最悪ですよ~。」
私は泣きそうな表情を浮かべながら先輩看護師達に訴えた。
「うわあ~こりゃ大変だね。あそこはオッカナイ助産師やあの田島がいるしね。でも、自分でしっかり仕事を覚えていけば大丈夫だから。田島よりも仕事を覚えて頑張っていこ!。」
先輩看護師の励ましもほんの灯くらいの効果しかない。もうこの先の看護師人生が絶望的だという思いの方が遥かに勝っていたのだ。私は途方に暮れながら消化器外科病棟の研修を終えていった。
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