バカ恋ばなし
紹介が終わると、私たちは看護部長の指示で配属ごとに整列した。私と同じ産婦人科病棟へ配属
となったのは広瀬 瞳と松田 有紀と私の3人だった。広瀬 瞳は看護学校時代の同級生で私と同じ22歳で、学生時代は臨床実習班も別でそんなに仲良い付き合いはないが、3年間同じ教室で共に学んだ。彼女はズングリムックリで暗い感じの私とは大違いで、身長163cmと高くてスタイルが良く、目鼻立ちがハッキリしていて笑顔がとても可愛らしかった。ショートボブのヘアスタイルがとても似合っていてそれが明るく爽やかな印象を醸し出していた。前の年は私と同じ外科コースで研修をしていたが、私とは違うグループで私が消化器外科病棟、彼女は手術室で研修を終了していた。
松田 有紀は、年齢は私よりも4歳年上の26歳で、T市内にある個人病院の外科病棟に5年間勤務していたが、3月で退職して4月からこのT*大学付属Ⅾ病院へ転職した。身長は私よりも少し高い157cmの身長に彼女もスリムで目鼻立ちが整っていてショートカットのスッキリした美人だ。そして年上もあって、私よりも数倍しっかりしていてやさしい印象を醸し出していた。外部から来た松田は当然この産婦人科病棟の悪評を知らない。
「あれ?丸ちゃんも産婦人科病棟なの?」
広瀬は大きな目で私の顔をまっすぐ見ながら近づいてきた。
「そうなんだよ~。もうどうしよう……‥。もしかして瞳ちゃんは希望していたの?」
「まさか!希望なんて出していないよ。私、オペ室希望していたのに……残念だよ~」
「そうなんだ……。あたしも全く希望していないのに配属になっちまったよ。もう最悪!」
私たちはお互い顔を見合わせて大きくため息をついた。松田は、そんな私たちのやり取りを半ば不思議そうに眺めていた。
「4月からこの病院に就職した松田です。よろしくお願いします。」
「あ、私丸田と言います。よろしくお願いします。」
私は少し慌てつつ松田と挨拶を交わした。
「私、この病院に来たのは初めてなので、何にも知らなくて。いろいろ教えてくださいね。」
松田は爽やかに微笑みながら私と広瀬に言ってきた。
「いや、私なんて去年就職したばかりなので、そんな教えるだなんて……。」
私は更に慌てて応えた。いくら臨床実習や就職して1年経過して病院内を回ってきたとはいえ、まだわからないことばかりでこんな超若輩者が人に教えることは超々おこがましすぎるのだ。
「では皆さんはそれぞれ配属先の師長と一緒に病棟へ移動してくださいねー。」
看護部長のハキハキした指示の後、私たちは病棟師長と一緒に配属先の病棟へ移動を始めた。
「産婦人科病棟配属の人はこっちよー!」
前田師長が両手を上げて私たちを呼んだ。私たちはゆっくりノコノコと前田師長のところへ向かった。
「もうさっさとこっちに来るの!」
前田師長は眉間に皺を寄せながら私たちに“気合を入れろ!”と言わんばかりに声を上げた。私たちはビクッとなって早足でサササと前田師長のところへ行った。
「師長の前田です、よろしくね!これから産婦人科病棟に行きますよ!」
「はい!」
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