バカ恋ばなし
科病棟の人気がワースト1の主な原因は田島先輩の存在があるといっても過言ではない。田島先輩本人は後輩たちからこんなに嫌われていることに気付いているのだろうか。
廊下を挟んですぐ隣にある分娩室では分娩中なのか、ベテラン助産師の高木さんが「はい!もうすぐですよーがんばってー!」と大声で妊婦を励ましている声が聞こえた。前田師長も分娩の様子を見に分娩室へ入っていった。
(うわー分娩中か。忙しそうだなあ。私、やっていけるかなあ……。)
不安な面持ちをしながら、私たち3人はナースステーションの隅っこで立ち尽くしていた。
数分後、休憩室から米倉主任とベテラン看護師の谷中さん、木村さん、山田さん他数名がナースステーションに入ってきた。米倉主任は、大きな丸い目をカッと開いてこっちを見た。大きな鼻からは蒸気が出てきそうな感じだ。米倉主任は、身長は私よりも少し高いくらいだが、ベリーショートな髪型で全体的にふっくらした体型で、目・鼻・口と顔のパーツが大きくて強面であり、それだけでかなり迫力を感じていた。実習のとき、病棟内では常に大きな声で職員たちに指示を出したり、業務の進捗状況を確認してリーダーシップをとっており、私たち学生に対しても
「学生さーん!今から分娩が始まるから分娩室に行ってちょうだい!」
「学生さーん!今から子宮筋腫のオペがあるから、一緒に来てちょうだい!」
「学生さーん!」
「学生さーん!」
と大きな声で指示を出していた。迫力があって怖い感じもするが、その反面頼れる肝っ玉母ちゃん的な印象を抱いていた。
(いや~いつ見ても迫力ある顔だなあ~。吹き飛ばされそう……)
更に数分後、ベテラン助産師の北島さんがやはり二日酔いの気怠そうな表情で入ってきた。
「あ、夜勤帯で分娩1件入ったんだね。師長はそっちに行ってんの?」
北島さんは眼が座ったような表情でナースステーションに入るなり、田島先輩に聞いてきた。
「はいそうです。深夜帯に緊急で入ってきて、7時頃に分娩室に入りました。もうそろそろかと。」
「そうか……。」
北島さんはつぶやきながら、視線を隅に固まっていた私たち3人に向けた。
「あれ?ねえ4月からうちの病棟に配属になったのってあなたたち?」
北島さんは気怠そうな表情で私たちに声をかけてきた。
「あ、はい。よろしくお願いします。」
「はーい、よろしく~。」
朝礼時間である8:30を5分程度超えた頃、前田師長がナースステーションに入ってきた。
「ごめんなさい、深夜帯に入ってきた分娩がたった今終わったのよ~。では、朝礼を始めま~す。おはようございま~す。」
ナースステーション内に「おはようございま~す。」と、弱々しい声が響き渡った。
「え~今日から1年間の研修を終えて3名の新人看護師が正式に配属となりました。早くこの病棟の環境に慣れて業務を覚えられるように、皆さん指導してあげてくださいね。では、順番に自己紹介をお願いします。」
前田師長は私たちの方を向いて、自己紹介するよう促してきた。私たち3人は広瀬、松田、私の順番に自己紹介をした。
「丸田です。外科コース研修を終えて4月からこの産婦人科病棟へ配属となりました。少しでも早く業務を覚えていき、即戦力になれるようにがんばりますので、よろしくお願いします。」
職員の視線が私たちに集中している中で、私は緊張のため強張った顔つきで挨拶をした。
「あのさ~北島さん、申し送り終わったら新人さんたちに病棟内のオリエンテーションをしてくれないかな。」
「は~い、わかりました~。」
前田師長は北島さんに私たちへの病棟内オリエンテーションを頼み、北島さんはおなじみの気怠そうな顔で返事をした。
「それでは申し送りをはじめま~す。」
本日夜勤担当だった田島先輩が申し送りを始めていった。夜勤明けでさっきまでふてくされた表情をしていたが、申し送りではベテラン職員たちに囲まれているためか、ハキハキと話していた。
廊下を挟んですぐ隣にある分娩室では分娩中なのか、ベテラン助産師の高木さんが「はい!もうすぐですよーがんばってー!」と大声で妊婦を励ましている声が聞こえた。前田師長も分娩の様子を見に分娩室へ入っていった。
(うわー分娩中か。忙しそうだなあ。私、やっていけるかなあ……。)
不安な面持ちをしながら、私たち3人はナースステーションの隅っこで立ち尽くしていた。
数分後、休憩室から米倉主任とベテラン看護師の谷中さん、木村さん、山田さん他数名がナースステーションに入ってきた。米倉主任は、大きな丸い目をカッと開いてこっちを見た。大きな鼻からは蒸気が出てきそうな感じだ。米倉主任は、身長は私よりも少し高いくらいだが、ベリーショートな髪型で全体的にふっくらした体型で、目・鼻・口と顔のパーツが大きくて強面であり、それだけでかなり迫力を感じていた。実習のとき、病棟内では常に大きな声で職員たちに指示を出したり、業務の進捗状況を確認してリーダーシップをとっており、私たち学生に対しても
「学生さーん!今から分娩が始まるから分娩室に行ってちょうだい!」
「学生さーん!今から子宮筋腫のオペがあるから、一緒に来てちょうだい!」
「学生さーん!」
「学生さーん!」
と大きな声で指示を出していた。迫力があって怖い感じもするが、その反面頼れる肝っ玉母ちゃん的な印象を抱いていた。
(いや~いつ見ても迫力ある顔だなあ~。吹き飛ばされそう……)
更に数分後、ベテラン助産師の北島さんがやはり二日酔いの気怠そうな表情で入ってきた。
「あ、夜勤帯で分娩1件入ったんだね。師長はそっちに行ってんの?」
北島さんは眼が座ったような表情でナースステーションに入るなり、田島先輩に聞いてきた。
「はいそうです。深夜帯に緊急で入ってきて、7時頃に分娩室に入りました。もうそろそろかと。」
「そうか……。」
北島さんはつぶやきながら、視線を隅に固まっていた私たち3人に向けた。
「あれ?ねえ4月からうちの病棟に配属になったのってあなたたち?」
北島さんは気怠そうな表情で私たちに声をかけてきた。
「あ、はい。よろしくお願いします。」
「はーい、よろしく~。」
朝礼時間である8:30を5分程度超えた頃、前田師長がナースステーションに入ってきた。
「ごめんなさい、深夜帯に入ってきた分娩がたった今終わったのよ~。では、朝礼を始めま~す。おはようございま~す。」
ナースステーション内に「おはようございま~す。」と、弱々しい声が響き渡った。
「え~今日から1年間の研修を終えて3名の新人看護師が正式に配属となりました。早くこの病棟の環境に慣れて業務を覚えられるように、皆さん指導してあげてくださいね。では、順番に自己紹介をお願いします。」
前田師長は私たちの方を向いて、自己紹介するよう促してきた。私たち3人は広瀬、松田、私の順番に自己紹介をした。
「丸田です。外科コース研修を終えて4月からこの産婦人科病棟へ配属となりました。少しでも早く業務を覚えていき、即戦力になれるようにがんばりますので、よろしくお願いします。」
職員の視線が私たちに集中している中で、私は緊張のため強張った顔つきで挨拶をした。
「あのさ~北島さん、申し送り終わったら新人さんたちに病棟内のオリエンテーションをしてくれないかな。」
「は~い、わかりました~。」
前田師長は北島さんに私たちへの病棟内オリエンテーションを頼み、北島さんはおなじみの気怠そうな顔で返事をした。
「それでは申し送りをはじめま~す。」
本日夜勤担当だった田島先輩が申し送りを始めていった。夜勤明けでさっきまでふてくされた表情をしていたが、申し送りではベテラン職員たちに囲まれているためか、ハキハキと話していた。