バカ恋ばなし
(私にも彼と話しができるチャンスが来ないかなぁ……)
宴会の中盤で、田島先輩がやっと石家先生の隣から離れてくれた。彼の右隣りにある座布団が空い
ているのを確認したとき、私の心の中で後押しをする声が聞こえた。
(よし!今がチャンスだ!話しかけろ!)
私はビール瓶を右手に持ってゆっくりと立ち上がり、胸が高鳴りながらも、獲物を狙うがごとく上目遣いぎみに石家先生へ眼の焦点をロックオンさせながら空いている座布団めがけて一直線に向かった。1m以内に石家先生を確認したそのとき、彼はゆっくりと立ち上がり、笑顔でこっちに向かって歩き出した。
(えっ⁈ナニナニ⁈こっちに来るよ!どうしよう!)
「ちょっとトイレ……」。
(えっ……)
石家先生は茹で上がったような真っ赤な顔で私の右横を通り過ぎた。彼が通り過ぎた瞬間、お酒と煙草の臭いがツーンと私の鼻をくすぐった。私はその場で立ち往生していた。
(どうしよう……)
とりあえず私はその場で腰を下ろして石家先生がトイレから戻ってくるのを待った。胸の鼓動はドキドキと高鳴り続けていた。
「早く戻ってこないかな……。」
今までの人生で、人がトイレから戻ってくるのをドキドキしながら待ったことがあるのだろうか。
10分程経って、石家先生は首まで真っ赤にした顔で戻ってきた。そして元いた場所にドカッと腰を下ろした。
(よし、戻ってきた!今度こそ先生の隣をゲットするぞ‼)
私が勢いよく腰を上げたそのとき、遠くから勢いよく石家先生を呼ぶドスの聞いた声が聞こえた。
「おい石家‼早く来いよー‼」
声の主はあの米倉主任だった。相当酔っているのか、彼女の顔は真っ赤に火照りまくっていてまるで赤鬼のように見えた。その隣には鬼軍曹北島さんがいる。ここにあの高木さんがいなくてよかったと心底思った。幸いにも彼女は今晩夜勤で欠席なのだ。
(赤鬼と青鬼だ……)
「センセ~イ、こっちこっち!一緒に飲も~よ~!」
北島さんがパンダのように目の周りを赤くして、上機嫌な顔で石家先生を手招きしていた。日本酒を煽って、かなり気持ち良く酔っているようだ。
「は~い!すぐ行きま~す!」
石家先生は呼び捨てにされたにも関わらず、真っ赤な顔をニコニコさせて米倉主任達のところに向かい、一緒にビールを飲み始めた。
(こりゃダメだな……)
私は、あきらめて元いた松田の隣に静かに腰を下ろした。そして、石家先生たちのいる方をジッと見つめた。
宴会の中盤で、田島先輩がやっと石家先生の隣から離れてくれた。彼の右隣りにある座布団が空い
ているのを確認したとき、私の心の中で後押しをする声が聞こえた。
(よし!今がチャンスだ!話しかけろ!)
私はビール瓶を右手に持ってゆっくりと立ち上がり、胸が高鳴りながらも、獲物を狙うがごとく上目遣いぎみに石家先生へ眼の焦点をロックオンさせながら空いている座布団めがけて一直線に向かった。1m以内に石家先生を確認したそのとき、彼はゆっくりと立ち上がり、笑顔でこっちに向かって歩き出した。
(えっ⁈ナニナニ⁈こっちに来るよ!どうしよう!)
「ちょっとトイレ……」。
(えっ……)
石家先生は茹で上がったような真っ赤な顔で私の右横を通り過ぎた。彼が通り過ぎた瞬間、お酒と煙草の臭いがツーンと私の鼻をくすぐった。私はその場で立ち往生していた。
(どうしよう……)
とりあえず私はその場で腰を下ろして石家先生がトイレから戻ってくるのを待った。胸の鼓動はドキドキと高鳴り続けていた。
「早く戻ってこないかな……。」
今までの人生で、人がトイレから戻ってくるのをドキドキしながら待ったことがあるのだろうか。
10分程経って、石家先生は首まで真っ赤にした顔で戻ってきた。そして元いた場所にドカッと腰を下ろした。
(よし、戻ってきた!今度こそ先生の隣をゲットするぞ‼)
私が勢いよく腰を上げたそのとき、遠くから勢いよく石家先生を呼ぶドスの聞いた声が聞こえた。
「おい石家‼早く来いよー‼」
声の主はあの米倉主任だった。相当酔っているのか、彼女の顔は真っ赤に火照りまくっていてまるで赤鬼のように見えた。その隣には鬼軍曹北島さんがいる。ここにあの高木さんがいなくてよかったと心底思った。幸いにも彼女は今晩夜勤で欠席なのだ。
(赤鬼と青鬼だ……)
「センセ~イ、こっちこっち!一緒に飲も~よ~!」
北島さんがパンダのように目の周りを赤くして、上機嫌な顔で石家先生を手招きしていた。日本酒を煽って、かなり気持ち良く酔っているようだ。
「は~い!すぐ行きま~す!」
石家先生は呼び捨てにされたにも関わらず、真っ赤な顔をニコニコさせて米倉主任達のところに向かい、一緒にビールを飲み始めた。
(こりゃダメだな……)
私は、あきらめて元いた松田の隣に静かに腰を下ろした。そして、石家先生たちのいる方をジッと見つめた。