バカ恋ばなし
ほどなくして米倉主任の達の“一気コール”が居酒屋の座敷内に響いた。
「おい石家!飲め飲めえ~!」
「いいねえ~先生。飲みっぷり最高だねえ~」
「まだ酒足りねぇ~かぁ?」
米倉主任や北島さん達のガハハガハハと派手な笑い声が響き渡る。石家先生は酔っ払って気が緩んだのか、ポケットから“LARK”という銘柄の煙草を取り出し、赤い100円ライターで火をつけてプカプカ美味しそうに吸い出した。米倉主任や北島さんも一緒になってメンソール煙草を勢いよく吸い出したおかげで、座敷中、霞のような煙と煙草臭が充満していた。鬼たちに一気飲みを強要されても石家先生は真っ赤な笑顔で楽しそうにビールをガンガン飲んでいた。あまりにも良い飲みっぷりに、私はだんだん心配になってきた。この飲みっぷりは翌日二日酔い地獄になることが私でも予想できた。
(先生、ほどほどにしないとヤバいんじゃ……。)
石家先生は宴会の最後まで、米倉主任達とビール、日本酒、焼酎等々をずっと飲んで騒いでいた。宴会終了時には、米倉主任と石家先生の顔は爆発しそうなくらい紅潮しており、目はドロンと座っていた。彼らは満足気にガハハと派手に笑いながら、居酒屋の外に出てきた。足元は少しフラフラして動きがやや緩慢になっているのが見えた。
「石家ぇ~また飲もうなあ~。」
「はあ~い。よろしくでぇ~す。」
お互い酔っ払い同士ヘロヘロと満面の笑みを浮かべながら話していた。石家先生はフラフラした足取りで、喜屋武教授のもとに歩きだした。彼が私の隣を横切ろうとしたとき、何かに背中を押されたかのごとく私は思わず声をかけた。
「先生―大丈夫ですか?あの~顔真っ赤ですよ。」
「あぁ~丸ちゃんか~。俺は大丈夫ですよ~。いやぁ~久しぶりに飲めて楽しかったですぅ~。こーいう飲み会は楽しいですねえ~最高!あれ?丸ちゃんは飲んだんですかぁ~?何か飲みがたりないんじゃないのぉ~?」
石家先生は、私の心配をヨソに酒と煙草の臭いが混ざった悪臭漂う息を吐きながら真っ赤な顔を緩ませた笑顔を私に向けてきた。真っ赤っかな顔で目がドヨ~ンと座っていても、悪臭漂う息を吐き散らかせていても、ふにゃふにゃに緩ませた彼の笑顔はより一層親しみやすさ、人懐こさを滲ませており、私はそんな彼の酔っ払い面に胸がキュンとなった。
「私、あんまりお酒を飲まないので……どっちかというと食べる方が好きだから。先生はお酒好きなんですか?。」
「は~い!酒大好きでえ~す。最高だよね~。あ、タクシーが来た。じゃあね~。お疲れ様~。」
ここでタクシーが居酒屋前に到着したので、石家先生は喜屋武教授と一緒に乗り込んで病院方面に向かって行ってしまった。
(先生、私のことを“丸ちゃん”と呼んでくれた……やったぁ!)
石家先生が私のことを“丸ちゃん”と呼んでくれたことがとても嬉しかった。石家先生に自分の存在をわかってくれたことや先生と私の距離が少し近づいた感じがして嬉しくてひとりでニヤついていた。
「ねぇ丸ちゃん、丸ちゃん。」
「あ、うん。」
松田が私の顔を覗き込んで言ってきた。松田に声を掛けられ、私は我に返って真顔になった。
「丸ちゃ~ん、顔をニヤニヤして何だか嬉しそうだよ~。」
「えっ?そうかな……」
私は、ドキッとして慌ててすっ呆けてみせた。
「そうだよ~。先生と話しをした後からニヤニヤしちゃって~。」
「そうだっけ?」
「そうだよ~。ねぇ、もしかして丸ちゃんたらさぁ~石家先生のこと……」
「い、イヤそんなぁ!」
私は真っ赤な顔をしながら慌てて松田の視線から顔を反らして否定をした。胸はドキドキと早く鳴り出した。
「へぇ~そうなんだぁ~。」
松田はニヤニヤした顔で私を横目で見ていた。私は松田に心を見透かされているのかと思い、ドキドキしていた。
(やばい!松田さんに私の心を見透かされている!!)
「でも、石家先生ってさぁ~いい感じだよねぇ~。周りにも好かれているしね~。」
「うん、そうだね。」
私は松田に心の中を見透かされているのかと思うととても恥ずかしくなった。でも、石家先生と少しでも会話を交わすことができたこと、私のことを「丸ちゃん」と呼んでくれたこと、それだけでも嬉しくて仕方がなかった。私はウキウキした浮ついた心持で家路についた。
「おい石家!飲め飲めえ~!」
「いいねえ~先生。飲みっぷり最高だねえ~」
「まだ酒足りねぇ~かぁ?」
米倉主任や北島さん達のガハハガハハと派手な笑い声が響き渡る。石家先生は酔っ払って気が緩んだのか、ポケットから“LARK”という銘柄の煙草を取り出し、赤い100円ライターで火をつけてプカプカ美味しそうに吸い出した。米倉主任や北島さんも一緒になってメンソール煙草を勢いよく吸い出したおかげで、座敷中、霞のような煙と煙草臭が充満していた。鬼たちに一気飲みを強要されても石家先生は真っ赤な笑顔で楽しそうにビールをガンガン飲んでいた。あまりにも良い飲みっぷりに、私はだんだん心配になってきた。この飲みっぷりは翌日二日酔い地獄になることが私でも予想できた。
(先生、ほどほどにしないとヤバいんじゃ……。)
石家先生は宴会の最後まで、米倉主任達とビール、日本酒、焼酎等々をずっと飲んで騒いでいた。宴会終了時には、米倉主任と石家先生の顔は爆発しそうなくらい紅潮しており、目はドロンと座っていた。彼らは満足気にガハハと派手に笑いながら、居酒屋の外に出てきた。足元は少しフラフラして動きがやや緩慢になっているのが見えた。
「石家ぇ~また飲もうなあ~。」
「はあ~い。よろしくでぇ~す。」
お互い酔っ払い同士ヘロヘロと満面の笑みを浮かべながら話していた。石家先生はフラフラした足取りで、喜屋武教授のもとに歩きだした。彼が私の隣を横切ろうとしたとき、何かに背中を押されたかのごとく私は思わず声をかけた。
「先生―大丈夫ですか?あの~顔真っ赤ですよ。」
「あぁ~丸ちゃんか~。俺は大丈夫ですよ~。いやぁ~久しぶりに飲めて楽しかったですぅ~。こーいう飲み会は楽しいですねえ~最高!あれ?丸ちゃんは飲んだんですかぁ~?何か飲みがたりないんじゃないのぉ~?」
石家先生は、私の心配をヨソに酒と煙草の臭いが混ざった悪臭漂う息を吐きながら真っ赤な顔を緩ませた笑顔を私に向けてきた。真っ赤っかな顔で目がドヨ~ンと座っていても、悪臭漂う息を吐き散らかせていても、ふにゃふにゃに緩ませた彼の笑顔はより一層親しみやすさ、人懐こさを滲ませており、私はそんな彼の酔っ払い面に胸がキュンとなった。
「私、あんまりお酒を飲まないので……どっちかというと食べる方が好きだから。先生はお酒好きなんですか?。」
「は~い!酒大好きでえ~す。最高だよね~。あ、タクシーが来た。じゃあね~。お疲れ様~。」
ここでタクシーが居酒屋前に到着したので、石家先生は喜屋武教授と一緒に乗り込んで病院方面に向かって行ってしまった。
(先生、私のことを“丸ちゃん”と呼んでくれた……やったぁ!)
石家先生が私のことを“丸ちゃん”と呼んでくれたことがとても嬉しかった。石家先生に自分の存在をわかってくれたことや先生と私の距離が少し近づいた感じがして嬉しくてひとりでニヤついていた。
「ねぇ丸ちゃん、丸ちゃん。」
「あ、うん。」
松田が私の顔を覗き込んで言ってきた。松田に声を掛けられ、私は我に返って真顔になった。
「丸ちゃ~ん、顔をニヤニヤして何だか嬉しそうだよ~。」
「えっ?そうかな……」
私は、ドキッとして慌ててすっ呆けてみせた。
「そうだよ~。先生と話しをした後からニヤニヤしちゃって~。」
「そうだっけ?」
「そうだよ~。ねぇ、もしかして丸ちゃんたらさぁ~石家先生のこと……」
「い、イヤそんなぁ!」
私は真っ赤な顔をしながら慌てて松田の視線から顔を反らして否定をした。胸はドキドキと早く鳴り出した。
「へぇ~そうなんだぁ~。」
松田はニヤニヤした顔で私を横目で見ていた。私は松田に心を見透かされているのかと思い、ドキドキしていた。
(やばい!松田さんに私の心を見透かされている!!)
「でも、石家先生ってさぁ~いい感じだよねぇ~。周りにも好かれているしね~。」
「うん、そうだね。」
私は松田に心の中を見透かされているのかと思うととても恥ずかしくなった。でも、石家先生と少しでも会話を交わすことができたこと、私のことを「丸ちゃん」と呼んでくれたこと、それだけでも嬉しくて仕方がなかった。私はウキウキした浮ついた心持で家路についた。