バカ恋ばなし
「やっぱプリンスはかっこいいねえ。丸ちゃん、思いっきり向かい合わせだった

ね。いいなあ。」

同じく親友の清子もニコニコしながら羨ましそうに言ってきた。清子は、身長は私

より少し高めの157cmで、肩までのセミロングヘアをいつも一つに束ねてきて

おり、ニコニコ笑顔で明るく、顔の輪郭が卵型というのも相俟ってお母さんのよう

な温かい感じを醸し出していた。そして面白おかしく話をすることが上手で、一緒

にいて笑いが絶えなかった。実は清子も譲二君に憧れていた。譲二君は毎朝シルバ

ーのロードバイクに乗ってK駅まで通っており、K駅前の駐輪場に止めていた。長身

のスラリとした学ラン姿とシルバーのロードバイクはとても似合っており、乗って

いる姿は様になっていた。私と清子は、とある土曜日の下校時にK駅前の駐輪場へ向

かい、こっそりと譲二君がいつも乗っているロードバイクのドロップハンドルやサ

ドルを譲二君がいないことをいいことにベタベタ触りまくっていた。

「ねえ、これがプリンス様の自転車だよ!」

「うわあ~ヤバい!プリンスのかあ……よし!いっぱい触っちゃえ!」

二人の女子高生がニヤけながらコソコソと他人の自転車を触りまくっている姿を第

三者が見ていたらどう思うだろうか……。

「あたしもプリンスのこと好きだけど、ここは丸ちゃんに譲るよ。」

一緒に譲二君のこと片想いしていた清子だが、あまりにも想いが強い私を見かね

て、途中で譲ってくれた。譲二君とのことを満足気に話していたのは私だけで、佳

子と清子は半ば呆れていたのではないかと今にして思う。それでも、譲二君を想い

ながら親友と恋バナをするこのひと時は私にとって、とっても楽しい時間であっ

た。そんな私のおバカな惚気話に根気強く付き合ってくれた親友二人にはとても感

謝している。この場を借りてお礼を言う。マジでありがとう!!
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