バカ恋ばなし
眠っているうちに次の停車場に到着した。そこはN県の手前のI県内にある老舗酒造で、昼食休憩も兼ねていた。
「丸ちゃん、着いたよ。」
後ろの席から広瀬に声かけられて、私は目を覚ました。眠気が完全に覚めずボーっとした頭を抱えながらバスのステップを降りて、昼食所へ向かった。
「ここでお昼休憩だって。隣は酒蔵があって日本酒の試飲ができるみたいよ。」
「へぇ~そうなんだぁ~。」
松田がウキウキした声で言ってきた。私はまだボーっとして覚めない頭を抱えながら興味なさげに返事をした。昼休憩会場である座敷内は宴会場のように広々としていて、何列も長い座卓が並んでいた。私たち一行は、座敷のいちばん奥側の座卓に向かい合って着座をした。石家先生は米倉主任と谷中さんの間に着座をしており、私からは斜め右側の離れた場所にいた。彼の反対側には前田師長と沼尻先生が着座しており、周囲をがっちり囲まれていた。座卓の上にはすでにお膳が並んでおり、店員が笑顔で「いらっしゃいませ~」とあいさつをしながらお茶を運んできた。お昼のお膳には見事に大きな海老の天ぷらが1本お約束のように載っていた。中身はやっぱり3分の2程油の含んだ黄色い衣で覆われており、肝心の身は全体の1/3程度であった。どこも観光客が入る休憩処の海老天ぷらはこんな感じなんだなあ~と改めて感心しながらサクサクと噛みしめて食べた。不味からず美味からずのやや豪勢そうなお昼ご飯を堪能した後、一行は隣にある酒造へと向かった。酒造の店員から、酒蔵の説明を聞いた後、日本酒の試飲ができる店に案内された。ここの酒造では、純米酒の他に、様々な果実酒の製造販売をしており、お酒の種類はかなり豊富であった。
「カンパーイ!やっぱ日本酒は最高だな!うわっ、美味しい!この『月下美人』はまろやかな味でガンガン飲めそう。」
「これ、リンゴの味が微かにしていて、甘くて飲みやすいね!」
皆が興奮しながらそれぞれ試飲の感想を言い合い、ワイワイと盛り上がっていた。私は桃の果実酒が甘くて飲みやすく、でも悪酔いしてバス車内で豪快に嘔吐をしたくないのでお猪口2杯程度で辞めといた。米倉主任と沼尻先生は、真っ赤な顔をしながら「カンパーイ!」と豪快に店内にある日本酒を片っ端から試飲していた。
「何だ!?これスッゲエ上手い!この飲み口最高だね!何杯でもいけるなぁ~。」
「主任、そんなに飲みすぎるなよ!夜の宴会までとっておけよ!」
バス車内で既に真っ赤な顔して出来上がっていたのに、試飲とはいえ日本酒をガンガン飲んで騒いでいる二人を見て、これから先起こることを想像し若干の恐怖を感じた。
「あの二人には絶対近寄らないようにしよ……」
もう一人、私と同じような表情を浮かべていた人がいた。B旅行会社の一木さんだ。彼はガイド役なので一滴もお酒の試飲はしていなかった。その代わり米倉主任の傍に立ってやや怯えているような表情を浮かべていた(ように私には見えた。)主任たちの酔っ払い具合を見て相当萎縮しているようだった。
「一木さん、夜宴会で赤鬼たちに絡まれるんだろうなぁ……」
私は、縮こまっている一木さんを見ながらひとり呟いた。
「丸ちゃん、着いたよ。」
後ろの席から広瀬に声かけられて、私は目を覚ました。眠気が完全に覚めずボーっとした頭を抱えながらバスのステップを降りて、昼食所へ向かった。
「ここでお昼休憩だって。隣は酒蔵があって日本酒の試飲ができるみたいよ。」
「へぇ~そうなんだぁ~。」
松田がウキウキした声で言ってきた。私はまだボーっとして覚めない頭を抱えながら興味なさげに返事をした。昼休憩会場である座敷内は宴会場のように広々としていて、何列も長い座卓が並んでいた。私たち一行は、座敷のいちばん奥側の座卓に向かい合って着座をした。石家先生は米倉主任と谷中さんの間に着座をしており、私からは斜め右側の離れた場所にいた。彼の反対側には前田師長と沼尻先生が着座しており、周囲をがっちり囲まれていた。座卓の上にはすでにお膳が並んでおり、店員が笑顔で「いらっしゃいませ~」とあいさつをしながらお茶を運んできた。お昼のお膳には見事に大きな海老の天ぷらが1本お約束のように載っていた。中身はやっぱり3分の2程油の含んだ黄色い衣で覆われており、肝心の身は全体の1/3程度であった。どこも観光客が入る休憩処の海老天ぷらはこんな感じなんだなあ~と改めて感心しながらサクサクと噛みしめて食べた。不味からず美味からずのやや豪勢そうなお昼ご飯を堪能した後、一行は隣にある酒造へと向かった。酒造の店員から、酒蔵の説明を聞いた後、日本酒の試飲ができる店に案内された。ここの酒造では、純米酒の他に、様々な果実酒の製造販売をしており、お酒の種類はかなり豊富であった。
「カンパーイ!やっぱ日本酒は最高だな!うわっ、美味しい!この『月下美人』はまろやかな味でガンガン飲めそう。」
「これ、リンゴの味が微かにしていて、甘くて飲みやすいね!」
皆が興奮しながらそれぞれ試飲の感想を言い合い、ワイワイと盛り上がっていた。私は桃の果実酒が甘くて飲みやすく、でも悪酔いしてバス車内で豪快に嘔吐をしたくないのでお猪口2杯程度で辞めといた。米倉主任と沼尻先生は、真っ赤な顔をしながら「カンパーイ!」と豪快に店内にある日本酒を片っ端から試飲していた。
「何だ!?これスッゲエ上手い!この飲み口最高だね!何杯でもいけるなぁ~。」
「主任、そんなに飲みすぎるなよ!夜の宴会までとっておけよ!」
バス車内で既に真っ赤な顔して出来上がっていたのに、試飲とはいえ日本酒をガンガン飲んで騒いでいる二人を見て、これから先起こることを想像し若干の恐怖を感じた。
「あの二人には絶対近寄らないようにしよ……」
もう一人、私と同じような表情を浮かべていた人がいた。B旅行会社の一木さんだ。彼はガイド役なので一滴もお酒の試飲はしていなかった。その代わり米倉主任の傍に立ってやや怯えているような表情を浮かべていた(ように私には見えた。)主任たちの酔っ払い具合を見て相当萎縮しているようだった。
「一木さん、夜宴会で赤鬼たちに絡まれるんだろうなぁ……」
私は、縮こまっている一木さんを見ながらひとり呟いた。