snowscape~彼と彼女の事情~
金魚みたく口をパクつかせていると、タイミングよく救いの声が横から割り込んできた。


「お前なぁ、友里ちゃんびっくりしてんじゃね~かよ!!そうやってきやすく触んねぇ~の!!女いるぶんざいが……」


「あ?友里?」


「そう、亜紀ちゃんの友達の友里ちゃん。ほらびっくりして固まっちゃっただろ」


隼人君の声が合図になり、旬と呼ばれた彼の手が慌てた様子であたしのマフラーから離れた。


壊れ物から恐る恐る手を離されたような気分。


照れてるなんて…


見破られたくない…


あたしは旬君の視線に気付きながらも、ときめいてる自分を見られたくなくて、目線をめいいっぱい地面に下げ、俯き続けた。



「おっ、わりぃ~!んな変なつもりで手出ししたわけじゃねぇよ?ただ首が埋まってたから苦しくねぇかな?って」



「あっ、いや、全然っ、平気です」



首にぐるぐる巻き付けたお気に入りのマフラーにますます顔をうずめ、口まですっぽり埋まったあたし。


すると、旬君の顔が急激に近くまで寄り、顔を覗き込まれた。


近い。近すぎる…


耐えられない。


耐えられない!


内心は“本当、もう無理!ギブです!”と大声で叫びたい。


「なぁ~に隼人君、友里は大丈夫だよぉ!!ね?友里っ♪」


「え?あ、うん」


「それより、早くカラオケ入ろう!!寒い~!!」



亜紀の投げかけに便乗して平気なフリをしたが、不自然にどぎまきしていたかもしれない…


亜紀の何か言いたげな視線。


なぜか顔を赤らめている隼人君の視線。


そして、旬君のどこか冷やかな視線が入り交じり、どうリアクションをとればいいのかわからず、焦ってしまう。


あたしの冷えきっていた体からは変な熱が放出され、耳まで熱く感じる。


四人を取り囲んだこの何とも言えない空気。


マジ取っ払って欲しい…。
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