snowscape~彼と彼女の事情~
救いの神の隼人君はやはり、救いの神だったらしく


「カラオケ入ろうよ」


という亜紀の誘いに乗り、先頭をきって店内へと歩き出してくれた。


そして、亜紀も嬉しそうにニヤニヤしながら隼人君の後を追いかけて行く。


端目から見て、今にも恋人としてくっついてしまいそうな隼人君と亜紀…


あたしは“二人でデートすればよかったのに”と思う反面


“でも、ここに来なければ旬君とは出逢えなかったし…”と思っていた。


亜紀達は旬君とあたしなどお構い無しで、どんどん距離を離して行く。


近いはずなのに遠い距離…


この場に置いてきぼりをくらったら、旬君と二人きりになってしまう。


あたしは“置いてかれたらヤバイ”と、やたら小走りに二人を追いかけた。


そんな中、背後に感じていた旬君の乗り気じゃない気配。


本当は気付いてた。


気付いてたけど、彼の表情を確認して、自分が落ち込んでしまうのがわかっていたから、あえて振り返らずに前だけを向いて歩いた。


「友里!こっち来てみ!この部屋最新機種だって。良さげじゃない!?」


店内に着くなり、亜紀のハイテンショな声が耳にささる。


流れているBGMをかき消してしまう程のキンキン声。


「俺は、亜紀ちゃんが決める部屋ならどこでもいいし~♪」


そう言いながらも、ちゃっかり他の部屋をチエックしている隼人君。


「ん~、でもこの機種よりこっちの方が歌い慣れてるかな」


「え~っ、こっちの方が絶対いいって!」


人に意見を求めながらも、亜紀は、あたしの意見など全く無視してくれた。
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