snowscape~彼と彼女の事情~
“あの~シカトですかぁ~?”まさにそんな状態だった。


鼻の下を伸ばし、わざと覗き見してアピールしても、無視も無視。


激しく虚しいんですけど…


虚しさに肩を落とし、普通に声をかける事にしたあたしは、とりあえず一息つき、チャンスを伺う為、再びクレーンゲームを背後から覗き見した。


「!!」


すると、クレーンに引っ掛かった今にも落ちそうなぬいぐるみがブランブランしている。


落ちそう。あ~っ!微妙!?どっち!!


そいつがあたしの胸を踊らせたまらない。


火がついてしまったあたしは、一気に興奮を隠せなくなった。


「あーーーっ!!!」


「うぉっ!!なんだよ……」



唐突に背後から声をかけたのに驚いたのか、振り返るなり、顔に似合わない大声を出した旬君。



「すっごい~!!取れたぁ!!!」


アホみたいにはしゃいで手を叩いているあたしに、クールな旬君は、何も言わず固まっている。


店内に流れるわけのわかんないレゲエサウンドが、やたら場の雰囲気を凍らせる。


非常に気まずいぞ…この展開は…


「あっ、あっ、ごめんなさい」


「え?いや、いいよ」


旬君はそう言いつつ、見事に捕まえた景品を手に取った。


白の小さなクマのぬいぐるみ。


でも…はっきり言って…可愛くない……


フッと視線をぬいぐるみから旬君に向けると、二人の瞳が絡み合った。


冷たいけど、透明な吸い込まれそうな瞳…


旬君を意識しているせいか、あたしの体温はまた急激に上がり、顔がのぼせそうだった。


「どうした?」


変わり者を見るような旬君の視線が、笑ってるみたいに見えて、とっても恥ずかしい。


ゆでダコを見ないで!そんな瞳で見ないで!でも、亜紀達に連れて来いって頼まれてるわけだし…負けるな自分!


気合いを入れ直し、自分なりのめいいっぱいの声を腹の底から出した。
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