snowscape~彼と彼女の事情~
「わりぃ~」


隼人君の問いかけに軽い口調で受け流した旬君は、亜紀達の向かい側に座るなり、長い足を雑に組んだ。


亜紀達のラブラブムードとは真逆のあたし達。


空いている場所は一ヵ所しかないけど、座っていいものかかなり迷う…


ドアの前に突っ立ち、その席を眺めていると


「つ~か、座らないの?」


「友里、なにやってんの?」


旬君と亜紀のどこか他人染みた言葉が突き刺さる。


ちょっとヤケになったあたしは、わざと可愛げなく


「座るよ」


と言い放ち、旬君の横に距離を開けて腰を下ろした。


…二人の間に、軽く大人一人は座れる。


あきらかに避けているあたしを見た旬君は、口角を上げ、笑いを堪えてるのがはっきりわかった。


冷たかったと思えば、突然優しい笑みを見せたり…


この人、いまいち掴めない。


今まで出逢った事のない、不思議なタイプの男の人。


とても素敵だし気になるけど、正直扱いずらい。


いや、逆に彼からすれば、何かにつけて一喜一憂する友里って女の子の方に問題があるように感じられてるかもしれない。


…人の気も知らず、目の前で亜紀ちゃん好き好きオーラを放っている隼人君。


マイクのスイッチを入れるなりマイクを通し、旬君に話かけだした。


「かなりハマってただろ?」


エコーのきいた、ちょっと吹いちゃいそうな隼人君の声。


「なにが?」


「UFOキャッチャーだよ」


「ああ」


そんな隼人君に突っ込みも入れず、たんたんと旬君は会話をかわしていく。


チャラい隼人君に、クールな旬君。


あたしは、真逆な二人が友達なのはなんとなく違和感を感じていた。


けど、この二人は真逆だからこそバランスがとれているんだと、今のやり取りを見て思った。
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