snowscape~彼と彼女の事情~
「さ~て!遅れてきた旬クンに一発、歌をかまして貰いますか?」


隼人君は、マイクを旬君の前に突き出し、怪しげに笑っている。


はっきり言って、その笑みはキモい・・


「つーか、お前ケンカ売ってる?俺は歌わねぇ~!!って」


そう言い、マイクを投げるように隼人君にぶつけた旬君。


恐く感じてしまうほどの攻撃的な唐突な行動。


あたしと亜紀は驚き、つい旬君と隼人君を交互に見つめてしまった。


「いってぇ~!!冗談だよ、冗談っ!!」


「ハハハッ!」


隼人君と亜紀が、声を重ね合わせ笑いだしたが、なんか腑に落ちない。


カラオケに来て歌わないとか、意味がわかんない。


すっきりしないこの気持ち。


いっそ、聞いてしまえ・・


「なんで?カラオケ来て歌わないの?」


「はっ?」


「せっかく来たのに……」


あたしは、目を合わせないようにして、旬君に疑問を投げかけてみた。


こんな時どもったら、相手に負けてしまう。


噛まないように、はっきりとした口調で旬君に言葉をぶつけてみた。


「ああ、嫌いなんだよカラオケがさ、しかも今日ホントは俺が来るんじゃなかったし。予定外なんだよ」


そう言い、目の前に置かれてあるデンモクをあたしに手渡す旬君。


もしかしたら、彼の機嫌をそこねてしまったかもしれない・・


「まぁまぁ、旬もこの際、歌えばいいじゃね~か」


気まずい雰囲気を察知したのか、隼人が間に入ってくれた。


そんな中、ただ一人、空気を読めない奴がいる。


そう。とぼけた女、亜紀だ。


亜紀はそんな揉め事は全然おかまいなしで、本を広げ、歌を決めようとしている。


「お前ね、いい加減にしろよ?なら俺帰るぜ?」


「はいはい、ごめん!!わかったよもう勧めねぇ~から」


二人の言い合いが熱をあげはじめた。


その中、割り込んだように小さなカラオケルームの中へ大音量の曲が流れ始めた。


三人が、いっせいに顔をあげると


「1番、うたっちゃいま~す♪」


とノリノリの曲を選曲した亜紀は、絶頂の笑顔を見せた。
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