snowscape~彼と彼女の事情~
*epispde1
―――永瀬友里(ながせゆうり)、17歳。


外へ一歩踏み出したら鼻がツンとしてしまいそうな、うんと寒い冬の日。


あたしの恋のカウントダウンは、親友にかかってきた一件の着信から始まったんだ…




「えっ、えぇぇえ!!カラオケ!?行く、絶対行く~!!」


皆が寛ぐ昼休みの教室に、親友の亜紀(あき)の大声が響く。


クラスメイトの迷惑そうな熱い視線。


隣にいるあたしにも自然と向けられ、つき刺さるように痛い。



「ちょっ、シーッ!!」


自分が原因でこうなった訳じゃないのに、急に恥ずかしさが込み上げたまらない。


あたしは頬を赤らめながら、携帯に食らい付いてる亜紀の手を無理矢理掴むと、急いで教室を出た。


「痛たたたっ…友里!手痛いってば!ってか今、隼人(はやと)君と大事な話してんだから邪魔しないでよ!」


「あぁぁあ!!一つ一つ声でかすぎ!もうちょい静かに話してよ!」


「わぁったわぁったから!ちょい待て!」


亜紀は人の話を聞きもせず手を振り払うなり、即座にあたしの口元へ手を押し当てた。


「んんう~ぅん!!」


本当一瞬の出来事。


子供みたいにもだえていると、亜紀はニヤリと微笑み、甘い猫なで声で隼人君との会話を続ける。


「隼人君ごめんねぇ~。うるさい女が隣で吠えてるから聞こえなかったの。うん。うん。駅の近くのカラオケ屋に8時集合ね。はぁ~い、友里も連れていきまぁす。じゃあね」


通話が終了すると同時に口元は解放された。


だが、状況を把握しきれないあたしは抵抗をやめ、目をパチパチするばかり…


そんな固まっている姿に見かねたのか亜紀は


「も~しも~し、友里ちゃ~ん。生きてますかぁ?」


とからかい、満面の笑みを浮かべつつ腹を抱え大爆笑していた。
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