snowscape~彼と彼女の事情~
笑えない。こっちは全く笑える状況じゃない…


「生きて…る。生きてるけどあたしも連れてくって何!?亜紀と隼人君二人でデートじゃないの!」


「あははっ。ちゃっかり話し聞いてるし。つか、カラオケもう一人来るらしいよ」


「えっ、誰!?」


「ん~っ、わかんない。隼人君のツレだから男じゃない?まっ、とにかくそう言う事なんで友里をカラオケに連行しまぁす」


一人勝手に話を進めていく亜紀。


いつもこんな調子で振り回されてるから慣れている。


慣れてはいるけど…


栗色のロングヘアーに大人びた美人顔の亜紀が、似合わないくらい瞳をキラキラさせ、少女の顔をしている。


まさに“マジ恋してます”の顔。


親友にこんな可愛い顔をされたら、さすがに断りきれない…


「はいはい、行きますよ~だ」


「よ~し、決まり。学校が終わり次第駅前のカラオケ屋行こうね」


「あ~うん。行こう行こう」


あたしはとりあえず亜紀と話を合わせた。


けれど、正直乗り気じゃなかった。


カラオケをするのは五本指に入るくらい大好きな事。


でも何人か男の子と付き合った事はあっても長く続かなかったし、あまり異性が得意ではないから知らない異性が来ると思うと、どうしても不安が先に来てしまう。


それでなくても亜紀とは真逆で、ショートヘアーに幼児顔


極めは身長150センチギリギリのあたし。


色気の“い”の字も兼ね備えてないあたしが亜紀の隣に立ったら、ただの子供に見えるはず。


《亜紀みたいに恋愛の数をこなしてきた人からしたら、こんな悩み悩みのうちに入らないだろうな…》


そんな事を一人考えていたら、亜紀の両手がスッとあたしの脇腹に触れた。
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