snowscape~彼と彼女の事情~
「友里、行くとか言うわりに何しけたツラしてんの。ほれ、笑え!笑え!」


「えっ、きゃあぁあ!!やめて!くすぐったいよ!無理!無理!」


あり得ないぐらいグニグニ脇腹の肉を掴まれ、全身の神経がおかしくなりそうなくらいくすぐったい。


さっきは人目を気にしてわざわざ廊下まで出てきたのに、亜紀のくすぐり攻撃のおかげで恥ずかしさはどこかに消え去り、大声を出していた。


「笑え~笑え~あはははっ」


「笑う!笑うからやめてえぇ!!」


長年連れ添っている亜紀は、あたしの弱点を知り尽くしている。


特に脇腹が弱い事ももちろん知っている。


腰が抜けそうになりながら、あたし達は時間を忘れ、廊下でじゃれあっていた。


――キーンコーンカーンコーン――


すると午後の授業を知らせるチャイムが優しい音色を奏で、廊下中に鳴り響いた。


周りを見渡せば、人が忙しく行き交う廊下から人の気配が消えかけていた。


「あっ、やべ。次の時間体育だ。着替えなきゃいけねぇし」


「あぁああ!忘れてた!」


「どアホ友里のせいだ。行くぞ!」


脇腹にまだくすぐられた余韻が残っている。


消えきらない余韻を残しつつ、二人は午後の授業を受ける為、ジャージを抱え駆け足で体育館へ向かった。
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