snowscape~彼と彼女の事情~
―――それからあたし達は午後の授業を無事に終え、放課後を迎えた。


みんなが帰ったほのかな暖かさが残る教室で、あたしと亜紀は外の寒さをしのぐ為にコートとマフラーを身につけ、身なりを整えてからとりあえず外に出た。


携帯で時間を確認すると、4時をちょっと過ぎている。


隼人君達と約束した8時まではあと4時間。


亜紀と話し合いをした結果、カラオケへはすぐ行かず、デパート巡りをして時間を潰す事になった。


足早に向かった駅前通りには大手のデパートが建ち並び、たくさんの人が賑わいをみせる。


クリスマスが近いせいか、色とりどりなネオンが所々に散りばめられ活気づく街。


意識し過ぎなのかもしれないけれど、幸せそうに手を繋ぐカップルがやけに目につく…


あたしはなんとなく、行き交うカップルと目をあわせないようにして、何ヵ所かデパートを堪能して歩いた。


そして、亜紀と何気なく化粧品コーナーに入り、新作の化粧品や香水を物色していると、突然亜紀が声を出した。


「友里、見て見て!この口紅かなり欲しいんだけど!」


目の前に差し出された試供品の口紅。それはいかにも亜紀が好みそうなベージュ系。


「似合いそうな色だね!試しに塗ってみ、塗ってみ」


「うん」


亜紀は一度唇を拭い、唇に口紅を乗せた。すると、柔らかな薄ベージュの口紅が唇を彩り、ググッと色っぽさが増す。


ラメが適度に光り、ぽってりとした唇には艶がある。


女のあたしから見てもヤバイくらいの色っぽさ…


「亜紀…隼人君ヤバイと思うよ」


「ん?隼人君全然ヤバくねぇし」


「いや、違うから。亜紀に惚れちゃうって事」


隼人君は“変な人”という意味にとらえ、勘違いしていた亜紀は、一瞬固まっていた。


だが、数秒間で理解したのか急に顔を赤らめ、あたしの背中をおもいっきり叩きつけた。
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