snowscape~彼と彼女の事情~
「ほ、惚れるとか、んなわけねぇから!」


余程隼人君に本気なのだろう。


いつもの亜紀にはない、素直過ぎるオーバーリアクション…


あたしはそんな亜紀を見て自然と口元がゆるみ、ついいやらしくニヤついてしまった。


「なぁんからしくないじゃん。今まで男の子の話しして動揺するなんて一度もなかったのに。ん、こらっ」


亜紀の肩をわざと突っつき、本音を吐けと煽ってみる。すると亜紀は


「わ、笑ってんじゃねえよ!あぁぁ~もう!あたしもわけわかんねんだって!」


と言い、頭をかきむしった。


頭をかきむしったおかげで、ちょっとした風にさえなびいてしまうサラサラヘアーは激しく乱れている。


恋愛経験が豊富だったはずなのに。


そんな亜紀ですら人を好きになり過ぎると、こんなにも動揺してしまうんだ。


恋は…


あたしが思っている以上に人を変えてしまう、不思議なものかもしれない。


「よくわかんないけど…今の亜紀、凄くいいと思う。ってかなんか羨ましいかも」


「羨ましい?」


「うん。羨ましい」


首を傾げ、今にもハテナマークが飛び出してしまいそうな亜紀の表情。


じっと見ていたらおかしさが込み上げ、段々笑えてきた。


「ぷっ。ぷはははは!いいのいいの。何でもないから気にすんな。なぁんてね」


「あ?ん?まっいいや。気にしな~い」


無関心なのか、面倒くさいだけなのかよくわからない返事。


でもあたしはこのサバサバした亜紀の性格が大好きだ。


一緒にいるだけで、毎日が本当に楽しくて充実させてもらってる。


時間が過ぎるのだってあっという間。
< 6 / 20 >

この作品をシェア

pagetop