snowscape~彼と彼女の事情~
「ん~っ、仕方ないなぁ。寒いけどいっちょいっちゃうか」


「ありがと~う、友里。好き好き~!ん~まっ」


袖から手が離れたと思うと、唇を前に突きだし、亜紀は冗談まじりにキス顔をし出した。


そんな亜紀のいろんな表情を、たった数時間の間に見れた気がする。


あたしの知らない女の部分…


亜紀とちょっと距離が出来たみたいで寂しさもあったけど、喜びがそんなものを吹き飛ばしてくれた。


寒い寒い雪が舞い散る外の世界は、あまり好きじゃない。


凍えてしまいそうなこの寒空の下で、寒さに耐えきれる自信などないのだから。


けれど、あたしは亜紀と一緒にその寒い純白の世界へ飛び込む決心を固め、デパートの重たい扉を押しのけた。


この扉の向こう側。


そこに、何が待ち受けているかさえわからぬまま、ひたすら扉を押しのける。


「友里、行くよ!開けちゃうよ!」


「ラジャー!」


「せ~の、行けぇぇ!!」


“愛しい彼との出逢い”


そんなまばゆい物が準備されているとも知らず、あたし達は掛け声と共に気合いを入れ、外へ飛び出した…
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