snowscape~彼と彼女の事情~
「うわっ!やべぇさみぃし」


「絶対あたしの鼻真っ赤だよ!マジ泣きた~い」


カラオケに早めに着いたあたし達は、店中に入る事なく外でギャーギャー悲鳴をあげながら隼人君達をひたすら待っていた。


辺り一面、真っ白く降り積もった綺麗過ぎる雪景色。


外のあまりの寒さに耐えきれず「はぁっ」と息を手に吐き、コートにしまい込んでいたミトンの手袋を両手にはめた。


首にぐるぐる巻き付けた真っ白なマフラーとお揃いの手袋。


せっかく完全防備になっても先に飛び出した亜紀の「さみぃ」を聞いた時、全身に伝わる寒さが一段と増した気がした。


「亜紀ぃぃ~隼人君達遅い~!!ギブ!ギブゥ!!」


寒さを通り越したあたしは半べそ状態だったはずなのに、あまりにも遅い隼人君達に段々怒りが込み上げて仕方ない。


時間にルーズ…


そんな奴は大嫌い!


と言わんばかりにふて腐れ、雪にお尻が付かないように座り、体を丸めた。


――ブルルルン――


駐車場に響き渡るエンジン音が耳に入ると


「あっ、あっ!隼人君達来た!友里!ほら、来たよ!」


と亜紀は興奮気味に声あげ、あたしの話など全く見えていない様子だった。


「マジ、ごめ~ん!!」


聞き覚えのあるちょっとチャラそうな隼人君の声。


その声を聞いた時《絶対目なんか合わせてやんないんだから!ルーズ男!》とあたしは思っていた。


「こんばんわ♪初めまして亜紀で~す!!」


高いテンションで誰かに愛想を振りまいている亜紀。


「どうも」



そんな亜紀に愛想なく言い放つ、聞き覚えのないちょっと低めの声。


「こいつは旬!!大学生じゃないけどね」


横からちゃちゃを入れる隼人君は勝手に男の自己紹介をし始め、亜紀同様に浮かれている。
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