snowscape~彼と彼女の事情~
そんな俺に深くため息をついている男(隼人)が隣にいる。
「ああ、待たせてごめん」
そのため息の理由は違うことに向けられているのはよく分かっていたが、気付かないふりをして足早に歩く
「つーか、旬よ……」
「あ?」
「彼女のこと知ってんの?」
「知らなきゃ付き合っちゃいけねぇの?」
その言葉に、またため息をつくと歩きながらタバコに火をつけた。
「彼女ホントに知らねぇの?」
「だから知らねぇって……」
しつこいなと付け加えると、
「ウチの学校のマドンナだぜ!あんな娘が旬(しゅん)に頭下げてまで付き合いたかったのかよ」
世の中終わったもんだと、煙を吐き出していた。
「同じ学校だったんだ」
「はぁ……それも知らねぇんだ」
隼人の言葉に俺は、興味ねぇもん。と言いたかったが、また突っかかってくるだろうとそれを呑んだ。
それが彼女、茉莉との始まり
そして、定かではないがもう1年が経ったのではないか。
あれは確か、夏の残り風を気持ちよく感じていた9月頃だったんじゃないかと思う。
そう、俺は茉莉のせいで大学を辞めたんだ……
そして、今はとび職。
たまに隼人たちが羨ましくもなるが、
まぁ茉莉に追いかけまわされるよりは断然こっちを選んで正解だったと思う今日この頃。
エンジンをかけると親方に連絡をし、今から現場に向かうことを告げるとタバコに火をつけアクセルを強く踏みだした。