可愛い幼なじみの求愛
一階におりると、階段の直ぐ側に楓くんが立っていた。
白シャツの上に線の入ったセーター。
その上には茶色の上着を羽織っている。
「うわぁ……かっこいい」
楓くんの服装、楓くん自身があまりにもかっこよくて、思わず口に出てしまった。
楓くんが口元を片手で隠す。
どういう感情なのかあまり読み取ることが出来ない。
だけど、少し耳が赤いような……。
「あ、ありがとう。風菜に初めて言われたから、なんか照れる」
言ったことはなかったかもしれない。
これを期に、伝えてみよう。
私は楓くんの目をしっかりと見て
「いつも心のなかで思ってる。楓くんはかっこいいし、可愛いよ」
そう言うと『はぁ〜』と言って楓くんが座り込んだ。
「か、楓くん!?」
「もう、照れるからやめて……。思った以上に破壊力、やばい」
片手だけじゃなくて、次は両手で、口元だけではなく、顔全体を隠している。
私は楓くんのことを少し、からかいたくなった。
だって、いつも私が動揺することばっかりだから。
「照れてるの?」
私は楓くんの横にしゃがむ。
「照れて……ない…」
そっぽを向いて答える楓くん。
「うそでしょ?」
「うそです……。風菜があまりにも可愛すぎるから」
今さっきのが嘘のように、楓くんがいつもの笑顔で私の方を見ている。
可愛すぎる、かっこよすぎる。
「照れてる?」
楓くんが私に、笑顔で聞いてくる。
「許してください………」
私の頭を撫でながらふふっと笑っている、楓くん。
ずるい………。
いつも余裕がありそうに見えて、かっこよくて、可愛くて。
だけど、時々、余裕がなくて。
そんな楓くんにドキドキして。
私は、きっと意識をしているのかもしれない……。
久しぶりに会ったとき、告白されたとき、びっくりした。
パニックになった。
そして、好きになったら、つりあうようになったら返事をすることに決めた。
その時は全然、ドキドキなんてしなかった。
楓くんが笑っているのを見て『可愛いな』とか、『かっこいいな』って思った。
今みたいに、楓くんの行動一つ一つに胸が高鳴ることはなかった。
これは私の気持ちが少しでも変化したからかもしれない。
この気持ちが恋なのか、いまいち分からない。
だけど、この気持ちを私は大事にしたい。
「そういえば、今何時?」
楓くんがスマホを見て、時間を確認する。
水族館は私の家から、少し遠い。
徒歩でも行けるけど、結構な距離をあるかないといけない。
だから、バスで行く。
バスだと、そこまでお金かからないし、案外早く着く。
「バスの時間、やばいよ」
楓くんがそう言いながらすっと立ち上がった。
私も立ち上がる。
「間に合わないかも?」
もし、この時間のバスに乗れなかったらイルカショーを見逃してしまう。
イルカショー見たいな。
楓くんと私が楽しみにしてたから。
「いや、今からちょっと急いで行けば間に合うと思う」
「急ご!」
私と楓くんは急いで靴を履いて玄関から出る。
「ねぇ、風菜。手、つなごうよ」
玄関の前で楓くんが急に言ってきた。
今は時間がない、という焦りと胸の高鳴り。
「……、いいよ」
握手をするように楓くんの手を握る。
楓くんは
「違う、こうだよ」
私の手に指を絡ませた。
恋人繋ぎというやつだ。
「え…?!」
「じゃあ、いこっか」
楓くんは私と手を繋いだまま、歩き出した。