可愛い幼なじみの求愛
【??? side】



あれは何なのか。



私は呆然として、目をそらす。



なぜなら、好きな人が女の子と手を繋ぎながら、ニコニコと喋っているのを目撃したから。




私の好きな人、楓くん。




彼は学校の王子様。




女子、男子ともに人気が高い。




そんな、彼に彼女はいないはず……なのに。




私はそらしていた目を彼のいる方へむける。



彼が彼女の手を引く。



そして、水槽を二人で見つめて話している。



「そういえ………あ……」



「そん……………った……」



会話の内容までは聞こえてこない。



だけど。



私は二人のつなぎ合っている手を見る。



指を絡めて、彼が彼女を見て、ニコッと愛しそうに微笑む。



胸がズキッと痛む。



二人の間には恋、いや、愛というものが芽生えているように見える。



私に、あの二人の間に入ることは出来ない。
 


そう思うほど、二人の想いは強いもののように見えるから。



私はうつむく。



これ以上、見るのは辛い。



あの二人は付き合っているのか。



付き合っているに決まっている。

 

あんなの見せられたら、諦めるしかない。



なのに、私は諦めたくないと思ってしまう。  




それくらい、彼が大好きなんだ。



「風菜、行こっか」



ふいにそんな声が聞こえて、勢いよく顔を上げる。



風菜………、どこかで聞いたことのある名前。



私は必死に思い出す。



記憶の糸を類い寄せる。



頭に浮かんだのは、同じクラスの『斎川風菜』という人物だった。



私は目を細めて、じっと見る。



いつも学校に来るときに髪を結んでいるせいなのか、雰囲気が違って見える。



あれは、本当に『斎川風菜』なのか。



確信はない。



だから、少しの希望を胸に確かめたいと思った。



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