可愛い幼なじみの求愛



「ふ……な、…うな」



誰かの声が聞こえる。 




そして、何かいい匂いがする。




「風菜」




耳元ではっきりと名前が聞こえて私は目を覚ました。



「あ、起きた。夜ご飯できたよ」



「ありがと」



どうやら、リビングの机に突っ伏して寝ていたようだ。



重いまぶたを開けながら私は楓くんにお礼を言う。




「「いただきます」」



二人で一緒に挨拶をしてカレーライスを口に頬張る。
 


私は楓くんの作るカレーライスが好き。



いつもなら、少なくても二杯くらいおかわりをする。



好きなのに、今日は味がしない。



胸に引っかかっている彩奈さんの言葉。




好きな人はいつまでも待ってくれない、という言葉。




私も少しは思っていた。




楓くんの周りにはいつも可愛い女の子が居る。




私なんかよりも優れた女の子たちが。




私が好きかどうかを考えていうちに居なくなってしまうかもしれないということ。




だけど、同時に少しだけ、大丈夫だろうと思っていた。



        
楓くんは私のこと好きって言ってくれた。




待つって言ってくれた。




前はそれを聞いて安心してた。




今は不安で不安でたまらない。




「風菜、おかわりする?」




楓くんが首を傾げて私の方を見ている。




「ううん。今日、食欲なくて」



私は『ごめんね』、『ごちそうさまでした』と言って椅子から立った。




楓くんのこと、信じられない自分が嫌だった。



「待って」



椅子から立ったとき、楓くんに腕を掴まれる。



「なんかあった?」




心配そうに私を見ている。




「なにもないよ」




いつものように私は言う。




「そっか………」




楓くんは悲しそうに目を伏せて私の腕を離した。



きっと分かっているのだろう。



私になにかあったことが。



だから心配してくれた。




だけど、私は嘘をついた。




二階へ上がって、自分の部屋に入る。




「私、最悪だ………」



ドアによりかかり、顔を手で覆う。



いくら考えても好きか分からない。



待つと言ってくれた楓くんを信じられない。




楓くんは私にまっすぐ気持ちを伝えてくれたのに、嘘をついてしまった。




「最低だ………」



ドアの前に座り込んで呟いた。



 
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