可愛い幼なじみの求愛
【咲 side】
私の親友、斎川風菜はとてもわかりやすい。
感情が顔にすぐ出るし、嘘を付くのが超下手。
ほら、今だって。
「これね、友達の話なんだけど……」
教室でお昼ごはんを一緒に食べていると、風菜が話題を切り出した。
『これね、友達の話〜〜』
風菜がそう言ったとき目が泳いだのを私は見逃さなかった。
これは嘘だ。
絶対に自分の話だ。
『自分の話でしょ?』、そう聞こうと思ったけど面白そうだから聞かないでおこう。
「友達がどうしたの?」
早く続きが聞きたい。
ワクワクする気持ちを抑えて、何も知らないフリをする。
「私の友達が、幼なじみと同居してるらしいの」
「え?同居……?」
私は耳を疑った。
「そう、同居」
風菜と幼なじみが同居?
幼なじみがいる話なんて聞いたことない。
ますます、興味が湧いてきた。
「ふ〜ん、それで?」
「なんか、同居初日に告白されて友達は……」
「ちょっと待って、え?」
「まだ、続きあるから」
話を続けようとする風菜。
私の頭の中は大混乱している。
「友達は返事をしなかったらしいの。」
「うん、うん」
「だけど、一緒に過ごしていくうちに好きになったんだって」
風菜と幼なじみが同居していて、幼なじみは風菜のことが好きで、同居初日に告白。
風菜は返事をしなかった。
だけど、過ごしていくうちに好きになった。
私は頭の中を整理する。
整理をして、思ったことは一つだけ。
風菜の幼なじみって誰?!
「……風菜の友達の幼なじみってどんな人なの?」
「めちゃくちゃいい人だよ。可愛くて優しくて料理上手で。」
可愛い……?
風菜の幼なじみって、もしかすると……
私の頭の中に一人の人物が思い浮かぶ。
楓くん。
風菜の幼なじみって楓くん?
「好きになってどうなったの?」
「好きになったけど、幼なじみは学校の王子様。気持ちを伝えらたらいい話なんだけど、勇気が出ないんだって」
学校の王子様って、楓くんじゃん。
風菜の幼なじみ楓くん説がほぼほぼ、確定になった。
風菜は気持ちを伝えたいけど、勇気が出ない。
そんなの、
「当たり前じゃない?普通、出ないよ」
「やっぱり、そうだよね。告白ってきっと難しいから」
だけど、難しいから、それで終わったら恋なんて実らない。
「難しいからって、諦めてたら、伝わらないよ」
風菜の友達の話を聞くフリはもう、やめよう。
私は風菜に伝えたい。
「楓くんは、風菜に気持ちを伝えたくれたんでしょ?」
きっと、沢山の勇気が必要だったに違いない。
「うん……」
「楓くんが風菜に好きって告白するまで、風菜は楓くんの気持ち、知らなかったでしょ?」
気持ちは言葉じゃないと伝わらない。
「風菜も楓くんに好きって言わないと、楓くんは風菜の気持ちわからないと思うよ」
「確かに、そうだね」
風菜は告白を決意したのだろう。
清々しい顔をしている。
「頑張ってね、風菜」
気持ちを込めて言う。
成功してほしい。
「友達の話だから!!」
風菜は顔を真っ赤にしながら、私の肩を叩いてきた。
「分かってるって、風菜と楓くんの話でしょ?」
「違うからー!!」
頑張れ、風菜。