意地っ張りな恋の話
握っていたあたしの手首を離すと、
くるりと正面を向く。
向き合ったことで見えたその顔は、見たこともない顔で。
眉を寄せているけど怒っている、不機嫌、
ただそんな感情なだけじゃなくて。
そっとあたしの頬に触れたとき、その顔がくしゃりと歪んだ。
「アイツ、まじで…」
「あ、さっきね、なんかびっくりしたよね急に…ほっぺ齧ったりなんかして、」
「平然と言うんじゃねえよ、もっと嫌がれよ」
「や、でも絢くんだってこの前ー…」
そこまで言って不自然に言葉が途切れる。
首に当てられた唇の感覚を思い出して、頬が熱くなっていくのを感じた。
「この前、何?」
「……何だったっけ」
「…思い出させてやろうか?」
耳元で低い声がしたと思ったら、ぐっと腰に手が回る。
いつも思うけど、高校生のくせにこんな素早く女をホールドする技術を持ってるって反則じゃないか。
「あー嘘嘘嘘、ごめんなさい嘘です…離して、調子乗りましたすみません」
思いつく限りの謝罪の言葉を並べるけど、一向に腕の力は緩む様子がない。