意地っ張りな恋の話


でもね、と続ける絵菜の言葉に顔を上げる。


「瑛ちゃんは多分、アンタにチューできてラッキー、って思ってるわよ…」


そう言ってあたしの肩に手を置き、もう片方の手は親指を立てた絵菜。

…そういう問題じゃなくない?




「チュー、って………
……ふーん、お姉さんそういうことできちゃうんだ
やっぱ大学生だね」


不意に後ろから聞こえてきた高い声に振り向くと、
2つの大きな目が非難を込めてあたしを見つめていた。


公園の入り口からずんずんこちらへやってくる、その女の子には見覚えがあった。


制服の短いスカートから伸びる細くて長い足、腰まである長い髪の毛。


「メグ、ちゃん?」

「メグの名前勝手に呼ばないでくれない?
アンタなんか大嫌い」


突然の罵声にヒュッと息を呑んだ。

隣に座る絵菜も流石に面食らった顔をして固まっている。


「絢くんのこと振り回してさ、
お姉さんはお姉さんで遊んでんだ?
信じらんない」

「や、違っ、それは誤解で…」

「最低だね。メグは本気だよ、絢くんのこと。だから邪魔しないでよおばさん」


最後に大きな目はあたしを思い切り睨みつけて、さっさと踵を返した。

あまりの衝撃に身体が固まったまま、動けない。


「柚璃…さっきの子って、」


気遣うように恐る恐る話しかけてくる絵菜になんの反応も出来ず、
ただ呆然とその場に居ることしかできなかった。


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