意地っ張りな恋の話
不穏な言葉に思わず顔を上げると、
絢くんの付きまといをしていた女の人がものすごい形相であたしを見下ろしていた。
あ、やばい。
あたし殺されるかもしれない。
その手に握られたハサミを見て、そう思った。
「ちょっ、落ち着いて…ハサミは置きましょう、ね?」
「うるさい!!何回警告しても絢に付き纏ってるアンタが悪いんだから!!!」
聞く耳はもはやないらしいその人は、長い黒髪から覗かせる真っ黒な目でひたすらあたしを睨み続けた。
ギラリと暗闇で光るハサミを見ていると、イヤでも全身からは冷や汗が吹き出していく。
ゴミ捨て場で力なく倒れ込むあたしを見下ろして、フンと鼻で笑った。
「…アンタみたいなのが、絢の隣にいる資格なんてないのよ」
ストーカーまがいのことをする人に言われたくない。
正常な時のあたしなら、きっとそう思ってただろう。
絢くんと喧嘩して、傷つけてしまった今のあたしにとってその言葉は威力抜群だった。