意地っ張りな恋の話
だからあたしに近づいたの?
絶望に染まった目をヨルくんに向けると、
彼はぱくりと口を動かした。
″ご、め、ん″
たしかにそう動いた口。
騙しててごめん?
お姉さんがこんなことしてごめん?
なんの謝罪かはわからないけど、確かに彼は″ごめん″と言った。
「っ、離して!!」
「いっ…てぇ」
勢いよく振り払った瞬間、
ヨルくんの手からパッと血が飛び散った。
「ヨルくん!!!!」
痛そうに顔を顰めるヨルくんの手のひらからは、だらりと血がこぼれていた。
血に染まったハサミを持ったヨルくんのお姉さんは、顔を顰めたヨルくんのことを見向きもせず、あたしに向かってきた。
″俺ねえちゃんのこと大好きなんだよね″
そう言って穏やかに笑ったヨルくん。
お姉さんのことを嬉しそうに話してくれた彼の顔を思い出して、
その瞬間あたしの中で何かがぶちりと音を立てた。