意地っ張りな恋の話
傷の手当てを終えたヨルくんに、さっさと帰るようにいいたかったけど。
…あのお姉さんがいる家に帰していいものか。
どうしようかと悩みに悩んで、あたしは澤くんに電話した。
「もっしー??おねーさん?珍しいね電話してくるの!」
「あー…ごめんね急に、しかもこんな夜遅くに…」
「どったの?」
ヨルくんを泊めてあげてほしい、という言葉を聞いて目をまんまるにしているヨルくんと目が合う。
なんだその顔は、そのまま家に帰れと言うほど薄情な女じゃないぞ。
快諾してくれた澤くんにお礼を言って電話を切る。
電話を切った後、視線を感じて渋々目を合わせた。
「…なんで俺のこと気遣ってんの」
「別に気遣ってるわけじゃ…」
「ゆりちゃんって本当お人好し」
ただのお人好しでこんなことしてるわけじゃない。
単純に心配だったからしたことで。
迷子みたいな途方に暮れた目をしたヨルくんを追い出せるほど薄情にはなれない。