意地っ張りな恋の話
絢くんの肩越しに見えたのは、あたしを心配そうに見つめる店長の姿。
「ごめんねゆりちゃん、どうしたもんかと思って絢に連絡しちゃったわ
絢もあの男の子と知り合いだったみたいだから…」
抱きしめられたままのあたしにそう声をかけて、先に帰るから鍵よろしくね、と絢くんに言って帰って行った。
大丈夫だ、と繰り返すあたしに必要以上に干渉しない店長がありがたかった。
「…誰にやられた?」
少し身体を離して顔を覗き込むようにした絢くんの目は怒りに染まっていた。
これは誰に言われたとか、言わない方がいい?
…この前言う言わないで喧嘩したばかりだ。
心配してくれる絢くんに、何もないと済ませるのは違うと思った。