意地っ張りな恋の話
すかさず身体に巻き付いた腕の感覚と、
ふわりと香った絢くんの匂い。
何、してるんだこれは。
「俺のブレザー被ってるから見えないし
何してもいい?」
首を傾げながら言った絢くんに、
アホかそんなわけないじゃん、と返そうとした。
返そうとしたんだけど。
「柚璃の顔あっつ…大丈夫?」
本当にもう、どこでこう言うの覚えてくるんだろう。
頬を手のひらで包まれて、ますますあたしの体温は上昇する。
そのまま顔を少し上げられて、そっと唇を寄せられるのを感じた。
ずっと、キスしたかった。
そう思っていたのはあたしだけじゃないって、思ってもいい?
柔らかい感覚にゆっくりと目を閉じた。
その後。
「…………アンタら、あたし先帰るから。
鍵よろしくねー」
店長の声に飛び跳ねた瞬間被っていたブレザーがずり落ちて、
一気に現実に引き戻されたのだった。
……やっぱり自重しよう。
◎おわり◎