意地っ張りな恋の話
後ろなんか見る余裕もなく、ただひたすら足を動かし続けてどのくらい経ったのか
気づけばあの女の人は居なくなっていた。
手汗でびっしょりの手を絢くんの手首から離して、ゼェハァと荒い息をついた。
「なんで、こんなことしたんだよ」
「…だって、なんか絢くんこまってたし…」
「…俺男なんだけど
あんなのなんとか出来るに決まってんじゃん」
「いやそうだけどさ…やっぱ二人きりとか、怖かったでしょ?
君まだ高校生なんだし、あんな状況で男とか女とか関係ないよ。
好きでもない人にあんな、手首掴まれて脅されるなんて…嫌でしょ」
ああ、息が整わない。
やっぱり順調に若さが失われてるんだろうか。
「………アンタ……」
「怪我は?大丈夫?」
「ん、大丈夫。強いて言うなら手首手汗でびちょびちょにされたくらい」
「…ごめんって」