意地っ張りな恋の話



「絢くんてどの辺に住んでるんだっけ」


「五月町だけど」


「うちと近いじゃん、うち五月寺のすぐ近くだよ」


「げぇ、俺んちもその近く…」


「げぇって何よ、失礼な」


ついさっきちょっと可愛いと思ったのに

また生意気なガキに降格しそうになった。



「柚璃ってさー…」


「ん?」


何かを言いかけたその言葉の続きを促した時、



「柚璃?」


聞き覚えのある声で足を止めた。


「佐倉、何してんの?」


「お前こそ…家この辺じゃねぇよな?何してんの」


「ちょっと、あれよ…さ、散歩?」


「…なんで疑問系?」


ストーカー女に追いかけられて逃げてました、とは言えず。


無難な返事をしようと思ったけど、あたしの演技力はゼロだった。


「その子、弟?柚璃って弟居たのか」


「弟じゃねえし」

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