意地っ張りな恋の話
◎◎
「佐倉サマ、というわけでノート頼みます」
「なーにが″というわけで″だよ、アホ」
「あなただけが頼りなのです、お願いいたします」
「…なんか情けなくなってきた」
たしかに私だって情けないよ?
同期の目の前で両手をすりすりさせて、ぺこぺこ拝んでるなんて。
屈辱でしかない。
だけど仕方ないじゃないか、ノートもまともに取ってないし講義ちゃんと聞いてないからレポートのテーマだって分かんないんだから。
「なに開き直ってんだバカ、ちゃんと講義聞け。授業料の無駄。親がかわいそうだ」
パコンと良い音がして、気づけばあたしは目の前の男の手にあった講義資料で殴られていた。
「うーわ、ひっどくない?手ェあげるとか最低、お詫びとしてレポートただで見せて」
「お前にはプライドとかないわけ?」
今のあたしに必要なのはプライドなんかじゃない、講義のノートとレポートのテーマだ。
「……分かったよ
教えてやるよ、テストのこと全部」
「え!!ほんと?!ついでにあたしの分のレポートやってくれてもいい…」
「自分でやれこのドアホ」
さすがにこの提案は一蹴されてしまったけど、まあ良いや。
ノートとレポートのテーマさえあれば対策はいくらでもできるし。