意地っ張りな恋の話
しばらく歩いて、あの女がついてきていないことを確認すると
絢くんは両手であたしの肩を掴んで言った。
「なあ、アンタほんとなんなの」
「なんなの、とは」
「なんでああいうことすんの、
俺のこと守ったりとか…いつもいつも」
あたしの目線に合わせてかがんだ姿勢のせいで、絢くんに顔を覗き込まれるような体勢になってしまって居心地が悪い。
じりじりと距離を取ろうと後ろに下がるけど、阻止するように肩を強く掴まれた。
「…ごめん。もうちょっとあたしがしっかりしてたら、絢くんに怖い思いさせないで済んだんだけど」
「っ…そうじゃなくて!
アンタも、柚璃も、怖かっただろ?怪我まで…顔に怪我までして…」
言いながら、あたしの頬を恐る恐る指で拭う。
血がついちゃうよ、
そう声をかけようとしたけどもう遅かった。
血に染まった指先を見て、絢くんはくしゃりと顔を歪めた。