意地っ張りな恋の話
カフェオレをトレイに載せてさっきの男の子の元へ運んでいると、
ふいに名前を呼ばれた気がして反射的に返事をしてしまった。
「あれ?なんか今呼ばれた気がしたんだけど」
「………なあ、コイツまじでなんなの?」
「いやあたしも知らないけど」
気のせいかさっきよりも絢くんの眉間の皺が深くなってる気がする。
「″柚璃ちゃん″、また来るね。次は連絡先教えてね?」
そう言ってぺたりと千円札を置いて、
するりとあたしたちの間をくぐり抜けた後ろ姿はドアの外へと消えていった。
「あれ?あたし名乗ったっけか」
「…マジで何あいつ、気持ち悪りぃ」
「絢くん口悪いなあ」
「なんか俺の名前も知ってたんだけど」
「え?!気持ち悪っ!!!」